お腹が、痛い (9)
ボクの両親が喧嘩をしない日はないと言っていい。
今のは多分、母さんが父さんに皿を投げつけた音だろう。
『五月蠅ぇよ!お前は黙ってガキだけみてろ!』
『どうしていつもそうなのよ!少しは反省したらどう!?』
下で二人が喚いているのを聞きながら、ボクは、眠る。
こいつらともじきお別れだ。
ぶワくしょい!!!
盛大に、くしゃみを一つ。
今夜はかなり寒い。寒さには強いはずの俺が鼻水を垂らすほどに。
風邪、ひいてないかな、あいつは。
鴛太郎はもう眠っちゃったし、俺もそろそろ寝ようかな。
なんとはなしに見上げた月は、中々に綺麗だった。
満月、か。ボクの出発を祝福してくれるのは、今は月ぐらいのものだろう。
取り戻しに、出かける。
東京にいけば二人に会えるとも思えないが、二人のいないこの町にはなんの興味もない。
さて、行くか、東京。
自転車で金沢から東京まで。つらいだろうが、ここにいるよりはずっと楽しそうだ。
沙耶と鴛太郎、二人がなにをしてるのかはよく分からないが、それでも二人に会いたかった。
今ある全てを捨ててでも。
月に祝われた少年は、静かにペダルをこぎ始めた。
作品名:お腹が、痛い (9) 作家名:アレキザンダー・ジョン