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汝近付く事勿れ

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私はあなたが嫌いです
あなたは私を束縛する
あなたの鎖は私には引き千切れない
あなたから離れてようやく手に入れた自由をあなたは近づきその鎖で奪う
きっとあなたは私を束縛していることすら知らないのでしょう
だからあなたが嫌いです




私はあなたが嫌いです
あなたは私を知らない
あなたは伝えるための言葉を声を容易く私から奪う
あなたと積み重ねてきた時間が私から伝える術を奪ったのです
きっとあなたは私から伝える術を奪っていることすら知らないのでしょう
かけられた鎖が私から伝える術を奪っていることも知らないのでしょう
だからあなたが嫌いです




私はあなたが嫌いです
あなたは私を隷従させる
あなたは私が従うことが当然と考えている
あなたは私が鎖をかけられ、言葉を奪われ、反抗する術がないことを知らないのでしょう
きっと私に意志があるなんてあなたは考えてもいないのでしょう
だからあなたが嫌いです




私はあなたが嫌いです
あなたは私を無邪気に貶める
あなたが揶揄いの言葉を吐くたび私はその言葉に傷つくのです
あなたは私が反抗する術を持たないが故に反論できないことを知らないのでしょう
きっとあなたは私が傷ついている可能性すら考えないのでしょう
だからあなたが嫌いです




私はあなたが嫌いです
あなたは私を利用する
あなたが私を便利な道具のように使うたび悲しくなるのです
あなたは私がどれだけ傷ついているのか知らないのでしょう
きっとあなたは私が悲しんでいることすら知らないのでしょう
だからあなたが嫌いです




私はあなたが嫌いです
あなたは私を容易に冒す
私を束縛する鎖も
私を従わせる命令も
私を傷つける言葉も
私にとってその全ては毒にも等しいとあなたは知らないのでしょう
きっとあなたは自らがどれだけ毒を孕んでいるか知らないのでしょう
だからあなたが嫌いです




けれどもそれ以上に私は私が嫌いです
あなたが私を束縛する度
あなたが私を知らないが故
あなたが私を隷属させる度
あなたが私を揶揄う度
あなたが私を利用する度
あなたが私を冒す度
私の中に嫌悪が募る
そんな私が私は嫌いです



だからどうかあなたは私に近づかないでください



私は自由でいたいのです
作品名:汝近付く事勿れ 作家名:夢宮架音