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ピーターとカレルフの森

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 その後も、さまよっている犬や猫や猿達に出会いました。パーカーのこっけいなダンスや歌や冗談に合わせながら、様々な種類の動物達はぞくぞくと列に加わってきました。




 カレルフの森は夜になると本当の姿を現しました。木々一本一本が暗闇の衣をまとうようにからまり合い、恥ずかしがり屋のパーカーの仲間の妖精達が出てきて、森の外に音が漏れないようにヴァイオリンやヴィオラやチェロを奏でました。木々は藤や梨や桐や薔薇など色取り取りの様々な花を咲かせ、演奏に合わせて花弁が繊細に揺れました。幻想的な森の中で、今や、長蛇の列になった動物達による、パーカーの行進は続きました。


 やがて一団は森の最深部の苔むした巨木の前に着くと、木々の天空が開かれて、月光が暗闇を掻き消し、そこにいた動物達を照らしました。その中には、ピーターのお母さんも居ました。ピーターはお母さんを見つけると、一団から外れ、
「お母さん!!」
 と叫ぶと、それに気が付いたお母さんも、「ピーター!!」と叫んで、二人は抱き合いました。
「ごめんね…。お母さん、ピーターを一人置き去りにして勝手なことをして…。でも、昔、お父さんが話してくれたように、森の女神様に会って、お父さんを生き返らせてくれるように頼みに来たの…」
 とピーターのお母さんは涙声で言いました。ピーターも瞳に涙をいっぱい浮かべて、
「僕もだよ、お母さん…」と呟きました。パーカーを除く他の妖精達や、動物達は、みんな二人の再会に感動して泣きました。
 すると突然巨木の中から大きな美しい女性が現れて、一同は騒然としました。パーカーは、
「このお方こそ、カレルフの森の女神である、フー様だ!!」と叫び、新たに連れてきた動物達を紹介しました。
「今日もパーカーは一番迷える者達を沢山連れてきてくれたね。どうもありがとう」とフー様はパーカーの頭を優しく撫でました。パーカーは得意の絶頂になり、嬉しさを抑えられないかのようにバック転を何度もしました。


「この森は本当は生き物達の痛んだ心を回復させる為にあるのです」とフー様は月の光で体をキラキラ輝かせながら皆に言いました。「けれども、心の醜い生き物達は、この森を危険な場所だとふれ回っている」とも説明しました。「そんな湿っぽい話はやめようぜ、フー様!!」とパーカーは言うと、フー様は笑顔になって、軽く頷き、ピーターの元まで行って、体の痛みと疲労を取り除いてくれました。
 そしてフー様と巨木を囲んで、苔むした地面に座って、盛大な宴が行われました。宴は傷ついた生き物達の心が回復するまで続くのです。ピーターとお母さんは、悲しみや不安を忘れて、パーカー達妖精のショーを見ながら、宴を楽しんでいました。宴は、いつまでもいつまでも続きました。


 やがて、ピーターのお母さんの心が回復して、お母さんに眠気がもよおして来ると、パーカーはこちらにやって来て、
「どうやら無事に心が回復したようだな。どうだい? 母さんと一緒に外の世界へ帰るかい? それともまだここにいるかい?」
 と聞きました。
 ピーターは、「フー様に、お父さんを生き返らせてくれるように頼んで、外の世界へ帰るよ」とパーカーに言いました。するとパーカーは、
「…それはお前とお前の母さんの願いだもんな。それは叶うと思うけど、このカレルフの森は、一度森から出ると二度と入ることができないんだ。それと同時に、この森での記憶を頂くことになっている。お前みたいな心の綺麗な奴と会ったのは初めてだよ。俺様がほんの少しの間でもこんなに美しい姿になれたのはピーター、お前のお陰だよ。だから余計に…」
 と悲しそうな表情をしました。ピーターのお母さんは完全に眠りの中へ入っていこうとしました。
「じゃあ、僕はこのカレルフの森での記憶を忘れないようにフー様にお願いするよ。君のことは生涯、決して忘れない」とうつむき涙ぐむパーカーと握手しました。
 横たわっているお母さんを見守るようにその場から離れて、動物達が次々と寝静まっていく中、ピーターはフー様の元へ歩いていきました。そしてピーターはフー様に、
「お母さんと僕の願い、僕らのお父さんを生き返らせて下さい。でも、僕は、このカレルフの森での出来事もお父さんと同じぐらい大事なものなので、ここでの記憶だけは残しておいて下さい。お願いします」
 と言うと、フー様は、
「分かりました。ピーター、貴方は本当に心の綺麗な人間ですね。いいでしょう。貴方のお父さんを生き返らせます。そして、貴方のこの森での記憶をなくさないようにします。パーカーの所へ行って、外の世界へ出たいと強く願って下さい」
 と言いました。ピーターは頷いて、パーカーの元へ駆けていき、パーカーとピーターのお母さんを囲むようにして目をつぶり、強く外の世界に出たいと願いました。
「じゃあな…」
 とパーカーの声が微かに聞こえたかと思うと、いつの間にかピーターとお母さんは森の入り口に立っていて、朝日が昇る光景を目にしました。


 その日の朝早く、本当にピーターのお父さんが帰ってきて、ピーターとお母さんは泣いて大喜びしました。村人達のピーターのお父さんに関する記憶も消えていて、お父さんを大歓迎しました。そして、アリアのお父さんである地主にきちんとお金を返して、三人はいつまでも幸せに暮らしました。




 ピーターは小説家となり、老人になった後も、彼の周りに集まってくる子供達の為に、カレルフの森の話をしてあげるのです。ピーターは、パーカー達のことを生涯忘れることなく、ピーターとパーカーの友情は永遠に固い絆で結ばれているのです。

                              了 2007年12月