『デスゲーム 信じられるのは自分だけ』
人のために生きる人間、自分のために生きる人間。
嘘を言う人間、嘘を言えない人間。
ただ生きるだけの人間、生きられない人間。
それは偶然起きることではない、全ては必然的におきるのだ。
この話でも、二種類の人間が現れる。
追う人間と、追われる人間。
先ほど言った二種類の存在は人間だけにしかない。
しかしこの追う、追われるという現象は、人間にだけある訳じゃない。
動物にだってある、人間よりも遥かに劣る動物がやっていることを,この話の人間はやる。
命という重い代償を覆いながら。
★
俺は夢を見ていた、かなり長い夢を見ていた気がする。
なんの夢かは何故だか覚えてない? どうしてだろう、夢だからか?
目が覚めた、最初に見えたのは………雲一つない空だった。
「ん、ん~~~」
俺は起き上がり、自分のいるこの場所を見渡した。
身に覚えがない場所だな。
とはいっても…………何も覚えてない?
「………?」
ここは何処だろう、辺り一面に杉の木が生えていた。
ていうか、杉の木ってなんだっけ?
いろいろと積もる疑問があるのだが、まずこれはなんだろう?
俺の右手には黒い携帯と左手には………拳銃かな?
「…………?」
俺は一体、誰なんだろう?
プルルーーーーー
「うわぁ!!」
女の子みたいな声を出してしまった。
それは俺の右手に持っていた黒い携帯が、急に鳴ったからである。
これは俺が持っている携帯だ、だったら出てもいいよな。
俺は黒い携帯を開き、自分の耳に当てた。
「も、もしもし?」
恐る恐る掛かってきた相手に話しかけてみた。
「やぁ、ユーザーナンバー3。」
掛けてきた相手は男だった。
とても明るく陽気な声でユーザーナンバー3と言った。
俺はそんな名前なのか?
「やっと起きてくれたようだねぇ~。」
「はぁ~」
この男は俺のことを知っているのかな?
「さっそくで悪いが、今からこのゲームの説明をしたいんだがいいかい?」
「……………ゲーム?」
「そう、ゲームだよ。」
男は意味深に言った、ゲームってテレビゲームか何かなのかな。
「君には今からデスゲームをしてもらうよ。」
「えっ、デスゲーム?」
俺は驚いてつい、携帯を落としてしまった。
だっていきなりそんなこと言われたら、誰だって驚くだろう。
「ルールは簡単明確、ただ逃げて目的地に着けばいいだけだよ。」
俺は落ちた携帯を拾い、再び耳にかざした。
彼の説明は確かに簡単そうだが、大事な事がいくつか抜けている。
「あの~、質問してもいいですか?」
「んっ、なんでも聞きたまえユーザーナンバー3。」
また、その名前かよ。
「あなたは誰ですか?」
「……………(プッ)」
なんだか今、笑われたような気がするんだけど。気のせいだよな。
「あれはホントに効くんだねぇ~。私は、私の名前はゲームマスターだよ。」
「ゲームマスター………ですか。」
「このデスゲームは、君の人生を大きく変える可能性があるんだよ。」
「えっ、人生を?」
俺の人生が変わるって、どうゆう意味だよ。
「人生なんてそうそう簡単に変わるものじゃない、だがこのデスゲームに勝利すれば簡単に変えられるんだよ。」
「………………どうやって?」
「このゲームに勝利したら、一千億が賞金として君のもとに支払われるんだよ。」
一千億って、たかが逃げて目的地とやらに行きばそんなに貰えるのかよ。
「君はこのゲームの中では、追われる側の人間だ。」
まぁ、逃げるっていうくらいなんだか、追われる側なのは当然だろう。
「追われる側の人間は君を含め5人いる。もう君以外の人間はゲームを楽しんでるよ。」
俺以外にも4人もいるのか、ていうことはかなりデカイゲームなのか?
「そして追う側、つまりは君にとって敵の人数は約……………70億。」
「………えっ?」
「お~い、聞こえてるか~?」
「えっ、あぁ。」
俺は正気を取り戻した。
ゲームマスターは言った、追う人間は約70億と。
なんで追われる側の人数が5人で、追う側の人間が世界中の全員なんだよ。
「このゲームはわかりやすく言うと、鬼ごっこだよ。君もやったことくらいあるだろう、鬼ごっこ。」
まぁたぶんあるだろうけど、鬼ごっこってかなりアバウトだな。
「追う側の連中は、君たちを殺す気で君を捕まえに来るからね。」
「はぁ。」
「彼らは君たちを捕まえたら、賞金一千億をもらえるからね。」
どうして同じ金額なんだよ。俺はそんなこと思っていた。
「殺す気といっても安心したまえ、君たちは絶対に死なない。ユーザーを殺す事は禁止されているからね。」
それは俺等追われる側の人間にしてみれば好都合だな。
「まぁ、半殺しくらいにはされるだろうけど。彼等はただユーザーを捕まえたら賞金を貰えるわけではない。君たちが目指す目的地に、捕まえたユーザーを連れて来たら勝利、賞金を貰えるんだよ。」
ということ、捕まったら終わりの鬼ごっことは違い、捕まっても逃げるチャンスはあるんだな。
「そして君の左手にある拳銃は、お助けアイテムって物だよ。もしユーザーが捕まりそうになった時、その拳銃を空に向かって撃てば、一回だけ無効にできるんだよ。」
…………別にいらないだろうという感情が、俺の頭を過った。決して殺されず、何度でも逃げる事ができるのだから。
「もしその拳銃を使ってしまった場合は、再スタート。もう一度ここからゲームを初めてもらう。その拳銃は君を守る最高の武器であり、最悪の武器でもあるもろ刃の剣なのだよ。」
「…………そうですか。」
もろ刃の剣ねぇ~、それは使って初めてわかることだ。とても強いが同時にとても脆い。
「この今君が使用している携帯は、私と話せること以外にもいろいろな機能が内蔵されているから試して損はないだろう。例えば君が車が欲しいと私に言えば、すぐにでもよういするよ。ただしタダではない、全て君の賞金から差し引くからね。」
頼めばなんでも手に入るってことか、それはまた便利なことで。
「まぁこれで、だいたいのルールは説明したけど、何か聞きたいことはあるかい?」
ゲームの説明は終わった、あと聞きたいことといえば一つだ。
「目的地って、何処ですか?」
「…………おっと言ってなかったね、目的地は一つしかなくてね。その場所は君の通っていた高校の屋上だよ。」
「………はぁ。」
作品名:『デスゲーム 信じられるのは自分だけ』 作家名:東からの訪問者