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東からの訪問者
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わたしはアイツと出会った

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十二月某日

この日、私の住む町は観測史上類を見ない最低な気温を記録した。


「さむいなぁ~。」

私は寒いのが嫌いだ。だからといって暑いのが好きなわけではない。

春みたいな感じの気温が、私は好きだ。

「なんで今日も学校あるんだよぉ~?」
 
雪の降り積もった道を、私は文句を言いながら歩いていた。

「うぅ~~」
 
毛糸のパツンを穿いて、腹巻を腹に巻いて、その上にはシャツを二枚とセーター。これが今制服の下に着ている物だ。
 
まぁそのほかにも、お母さんの編んでくれた手袋とマフラー。いろいろな防寒グッツを体中に装備している私。

「さむい。」

薄暗い空、私は学校へ行くため駅に向かっていた。この辺りには高校がないから一時間かけて電車で通ってる。

私はちょっと、ホンのちょっとだけ普通の高校生と違う。

違うからって、超能力や時を飛べるみたいな力を持っているわけではない。

ただ、『恋』ってモンをしたことがない…………だけだ。

「ふぅ~~、やっと着いた。」

白いけむりを口から出して、私は嬉しさを表した。

この駅の電車は、一度止まったら十分は動かない。乗る人なんて三人くらいしかいないけど。

私はいつも始発に乗っている。

私の乗る始発には、私一人の時と、町内会のおじいさんがいる時の二パターンしかない。

「ここはいつも静かだな。」

毎日来ていると、愛着が湧いてくる。

駅の階段を上りながら、わたしは思っていた。

カッカッカッ

コンクリートの階段を、何かが降りてくる。

この駅に、ましては始発が止まっている時間に、降りてくる人なんて?

私は前を見つめていた目線を、少しだけ上げてみた。たぶん降りてくる人には、上目使いみたいになると思う。

「……………」

「………んっ?」

それが、わたしとアイツの出会いだった。

そこには真冬なのに、半袖で生地の薄い服を着た男が立っていた。

背中には、かなりデカイバックを背負っていた。

ここにはまったく似つかない人間、わたしは一目でそう感じた。

わたしと男は今、目が合っている。

そして止まっている。

傍から見たら、とても変な光景だ。

「暑くないのかよ、そんなに着込んで?」

「…………さむいの、嫌いだから。」

わたしは今、ツッコムでいいでしょうか?

「あっそ。」

男は驚くほど無愛想で、ほんとうに人間なのかよと思った。

「あなたは、寒くないんですか?」

「………さむいよ。」

男は歩き出した、頭をポリポリとかきながら。

「だったら、なんでそんな格好を?」

考えるより先に、言葉が出てしまった。

わたしはちょっとこの人の事を、知りたくなった。

何故だかはわからないけど、無性に知りたくなったのだ。

「服なんて別に、俺には必要ない。大体、金がないし。」

彼はわたしの横を通り過ぎた。

「これ、どうぞ。」

首に巻いていた手編みのマフラーを、わたしは彼に差し出した。

わたしの中の良心が、そうしろって言っている気がしたから…………

「…………ありがと。」

男はわたしの方を向いて、マフラーを掴んだ。

暖かかった

マフラーを掴んだ瞬間、男の手はわたしの手に触れた。

彼の手はわたしの体なんかより、数倍は暖かかった。

「……………何で、握ってるんだ?」

「えっ、あ!」

わたしは顔を真っ赤にして、何歩か下がってしまった。

無意識のうちに握っていたらしい、彼の暖かい手を。

「ご、ごめんなさい。」

「…………別にいいけど。」

わたしは思った。

彼は今、なんだこの女? 変な奴と思っていると。

「気を付けろよ、階段滑りやすくなってるから。」

彼はわたしの頭を撫でてそういった、やさしい人だな。

赤の他人のわたしにそんな事言ってくれるなんて。

「ありがとう…………ございます。」

この人、背が高いな。

わたしが一二歩階段を下がったのに、彼の目線はわたしより高い。

心臓が熱い、鼓動が早くなるのを感じる。

「それは恋だよ!!!!」

小学生からの友達で由美という、わたしの数少ない相談ができる人だ。

「ついに、ついに麻奈美の春が来たのねぇ~(今冬だけど)。」

同じく小学生からの友達で恵理という、ちょっと変わってるけど優しい子だ。

「違うよ、それまではいいけど。アイツ、そのあとなんて言ったと思う?」

わたしは机にほっぺたをつけて、今朝起こった最悪な事件の続きを話した。


どうしようわたし、変な気分になってきた。

「………?」

ヤバい、そんなに見ないで。

わたしはくるっと半回転して、走るように階段を上った。

もしわたしに、過去をやり直す力があればやり直したい。

「きゃっ!?」

痛かった、わたしは弁慶の泣き所を階段の角にぶつけた。

「うぅ~~」

泣いてしまった、あまりの痛さに。

「だから言っただろう、滑るって。」

彼はわたしの腰に手をやり、立たせてくれた。

そう、ここまでは完ぺきによかったのに。

「毛糸のパンツは…………ないって。」

パチンッーーーー