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ポッキーゲーム。

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「ポッキーゲームしようぜ」

「…はい?」
 綺羅は拍子抜けした声をだした。
「知らないとは言わせねぇぞ。ポッキーゲームだよ。ポッキーゲーム!」
「まぁ、ポッキーゲームくらいは知ってますけど…」
 たしか、ポッキーを二人で食べあって途中で折ったら負けってやつですよね? と綺羅は斎に聞き返した。斎は頷いて、ポッキーの箱をどんっ! と机の上に置く。
「…どんだけポッキー買うんですか」
「食べたいだけ!」
 斎は何故か誇らしげにそう笑って、再度、
「ポッキーゲームしようぜ!」
 と誘ってくる。
「…はい、質問です斎先輩」
「どうぞ綺羅後輩」

「どうして今日、ポッキーゲームやるんですか?」

「なんだよー、んなこともわかんねーの? 今日は何の日?」
「さぁ…」
 そんな返事がくると分かっていた斎叫んだ。

「今日はポッキーの日だ!」

「…」
「おいおい、なんだよそのテンションの低さは、その反応の薄さは~」
「あ、そうですか…ポッキーの日、でしたか」
「む、無理やりに反応されるのもなんか物悲しいぞ綺羅…」
「あ、それはすみません」
「謝られるのも…ま、まぁいい…」
 斎は一瞬肩を落としたが、すぐに立ち直って、
「っつーわけでポッキーゲームしよう! 今すぐしよう! 反対意見なんざ認めねーかんな!」
「つまり拒否権は無いと」
「そういうことっ」
「…じゃあ、なんで最初に誘ったんです?」
「そ、それは、物事には順序ってのがあるだろーが」
「拒否権はないのに?」
「無くても、だ! さ、やろう!」
 綺羅のちょっとしたつっこみに斎はなんとなくあっぷあっぷしつつも、強引にポッキーゲームを始めることを宣言した。

「あ、お前さりげに斎先輩って呼んだな?」
「貴方も、さりげに綺羅後輩って呼んだじゃないですか」


 斎はポッキーを取り出した。そして綺羅に手渡す。綺羅はそれを一瞬見つめ、ポッキーをくるりと一回転させた。
「…」
 斎は一回転させたポッキーを取り返し、一回転させた。
「…」
 綺羅も同じようにまた一回転させる。――堂々巡り。
「…綺羅」
「…斎さん」


「チョコの部分はあたしんだ!」
「いいや僕のです」


 そんな言葉から数秒の睨み合い。

「「―――」」

 結局、じゃんけん。
「じゃーんけーん」 「ぽいっ」
 斎、グー。綺羅、チョキ。
 斎の勝ち。


 そして、やっとポッキーゲームの始まり始まり。


 とりあえず、ルール通りに斎はポッキーを銜えた。勿論のこと、チョコの方をだ。綺羅はちょっと不服そうにしている。
「はひやってんだよ。ははくくわへろ」
「何言ってるのか、よくわかりませんが、とりあえず銜えろって言いたいんですね」
 と、斎の目の前に口を寄せてきた。そして、銜える前に一言。
「これって、折ったら負けなんですよね? ってことは、折らないで続けたら、斎さんと僕は、キスすることになるわけですか」
「!!」
「へぇ…斎さん、僕とキスしたかったんだ」
「なぁっ!」

「それじゃ、スタート」

 一方的な綺羅の掛け声と共に、綺羅がポッキーを銜えて食べ進めた。斎はあっぷあっぷしている。そのまま折らずにポッキーを食べ進め、
 斎の唇間近に来て――ストップした。

 目の前には、顔を真っ赤にした斎が。


 ぽきんっ!


「あ」
 折れてしまった。完膚なきまでに完璧にぽっきりと丁度中心から折れてしまった。
 どちらが折ったかだなんて、言わなくても分かる。
「このゲーム、僕の勝ちですね?」
「~~っ!」
 斎は顔を真っ赤に染めている。
「き、綺羅がキスとか言うからじゃねーかよっ!」
「てっきりしたいのだとばかり」
「いや、したくねぇ! …わけじゃないけど…その、」
「なんですか?」

「…恥ずかしいんだよ! ばかぁっ!!」

 斎がそう叫んだ。綺羅はそんな返事を見越していたらしく、斎の頭を撫でている。
「な、なんだよ」
「いや、可愛いなぁ、と思って」
「ま、またあたしをからかうのかよっ」
「いいえ、本当に、斎さんは可愛いですよ?」
「~~~」
 なんだか腑に落ちないのか斎は黙り込んでいるが、若干表情が緩んでいる。

「…それじゃ、二回戦と行きましょうか」
「…え」
 そんな斎に、綺羅は微笑を浮かべながら言った。

「ポッキーはまだまだたくさんあるみたいですし、僕だって。
 ポッキーのチョコの部分を食べたいですしね?」

 ――その後の斎の顔が終始真っ赤だったのは、言うまでもない。


作品名:ポッキーゲーム。 作家名:紅月 紅