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『クリスマスファンタジー』

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<第一章 二年ぶりのホワイトクリスマス>

      『楽しみな予感』


 12月19日。ニューヨークのとあるアパートにある出窓からは、
自分達が住んでいる街が真っ白に染まっていく様子が覗えた。
灰色の空からはチラチラとゆっくり、儚い小さな初雪がふってきていた。
じっと見ていると、まるで白い妖精が舞い踊っているように見える。
道行く人々は小さな可愛らしい存在に気づき、立ち止まっては手の平を空に向けて
雪をすくっている。みんな驚いているが、嬉しそうでもある。
よく小さい頃は、雪の結晶が見えないものかと、じっと手袋に落ちてくる雪を見つめていたのを覚えている。
 さっきまで見ていたテレビのお天気アナウンサーは、この雪が、
一月初旬までふり続けるだろうと予報していた。
ということは、今年は本当のクリスマスになるってことだ。
本当のクリスマス、ホワイトクリスマスだ!
私、アンバー・ウィルソンが12才の時から今までの2年間、クリスマスに雪がふることがなかった。
パパが言うことには、地球温暖化のせいなんだって。
氷河が溶けたり、砂漠が増えたり、オゾン層が破壊されたり、そんなようなこと。
それのおかげでクリスマス・イヴは、灰色のアスファルトむき出しの最悪の日になった。
夜にパパとエリーゼとジェイクで、街の中心にあるおおきなクリスマスツリーを
見に行ったのに、雪がふってないからクリスマスって感じはしないし、
気のせいか車の排気ガスや騒音がいつもより気に障った。
 家で家族の時間を過ごしていても、窓から見える景色は灰色のニューヨーク。
真っ白なニューヨークじゃない。
クリスマスが大好きな私にとっては、サラおばあちゃんお手製の豆スープくらい
気分が下がるクリスマスになった。
サラおばあちゃんが作る豆スープって、尋常じゃないくらいまずすぎる。
色は薄気味悪いきみどりに近い黄色で、湯気がむんむんしてて、恐ろしく臭い。
なんていうか脱ぎたての靴下と、犬のよだれと、
あとは腐ったキャベツが混ざったような匂いがする。
ここまで言ったら、どれだけ私がクリスマスが好きか分かってくれると思う。
 そんな、行事ごとの中でナンバー1、いやオンリー1、とにかく何でも一位な
クリスマスが念願のホワイトクリスマスになるってことは天国に昇るくらい幸せな事だ。
それに、今年のクリスマスは今までのクリスマスとは違うのだ。
いろいろな意味でとても違うものになると思う。
 一つ目の理由は、エリーゼが退院してくるってこと。
エリーゼは私のお母さん。本当のお母さんじゃないけどね。いわゆる継母。
でも継母って言ったってエリーゼは優しいしおもしろいし、最高の継母。
シンデレラに出てくるような、あんなツンツンしてて痩せてて不気味な感じじゃなくて、
どっちかって言うとコロンコロンしてるって感じかな。
いつもほっぺたが赤くて、いつも笑っている。そしていつもブーツを履いている。
夏でも冬でも、四季関係なく。
暑くないの?と聞いたら、ブーツは全人類にとって最高の履物だって答えが返ってきた。
その答えにいまいち納得できないけれど、エリーゼのそういうところが好き。
なんか、他の人には見えないものを知っている感じがするから。
 エリーゼがお母さんの代わりになってくれて本当によかったと思っている。
パパがエリーゼを選んでくれたことにも。
パパとエリーゼは、本当のママが死んでから5年後に結婚した。
同じ航空会社に働いていた、上司と部下っていう関係から。
パパが言うには、本当のママとであった時と同じときめきを感じたらしい。
パパがエリーゼを紹介した時、当時私は8才。ジェイクは6才だった。
本当のママが死んだのは私が3才の時だから、ママの思い出はあまりないし、
顔だって写真を見るまで思い出せなかったくらい。
それだけママと過ごした時間は少なかったから、エリーゼが家にやってきた時も、
お友達が増える~って思っただけだった。
面倒見がよい、かなり年上なお友達。だから私はエリーゼのことをママとは呼ばない。
パパはそのことを気にいしているっぽいけれど、ただ単にママっていうのが
どんなものか分からないだけ。それなのに見ず知らずの人をママなんて呼べるわけ無い。
今ではエリーゼのことを知っているし大好きだけれど、
やっぱり友達っていうイメージが強いから。エリーゼあまり気にしていない様子だし。
 そんな大好きなエリーゼが入院するってなったときは思わず泣いてしまった。
産まれた時からもっている持病か何かが、急に深刻になったらしい。
病名は分からないけれど、脳の病気っていうことは大体分かっていた。
病院にお見舞いに行っても普段と全然変わらないから、気は楽だったけれど、
結局1年半も入院している。ということはやはり病状が深刻らしい。
でもやっとこのごろ安定してきて、そしてやっと退院できるというわけだ。
何だか家で会うのは気恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しい。
退院して帰ってくるのがクリスマス・イヴ。早く会いたいな。
 そして二つ目の理由は、クリスマスにマイケル・ラダウェンとデートをするってこと。
絶叫ものでしょ?叫んじゃうでしょ?
あの、マイケルとだよ、あのマイケル。
数学とスペイン語のクラスが同じあのマイケル。
みんなが憧れる男子No1のあのマイケルと。
こんなの奇跡的過ぎる。誘われた時は、本当に夢だと真剣に思っちゃって、
「あんた、次の瞬間にはジェニファ先生に変わって、That rightって言いながら、
スキップするんでしょ?」
って、馬鹿なこと言っちゃった。あの時はマジであせった。
だってマイケル、眉がくっついちゃうくらい顔しかめて、
この子誘って大丈夫だったんだろうかって顔するんだもん。
本当にあの時は必死に無理やりなフォローしたわ。
 でも、いろいろあったけどデートに行くって事は決まった。
シアターセブンで、クリスマスがテーマのコメディ映画を見るし、
クリスマス市場にも行く予定。っていうか、私の頭の中では。
本当に本当にクリスマスが楽しみ。こんなに楽しみなクリスマスは今まで無かったかも。