ピエロ
いつもいつも笑っている。
誰かがその仮面を奪い取る。
道化は道化でなくなった。
そこにいたのは、怯える子供。
仮面を取られたピエロ。
怯えるピエロ。
それでも笑う。
笑おうとする。
今にも泣き出してしまいそうな顔で、ぎこちなく、笑う。
ぎこちなく笑うピエロは、誰もよりつかない。
道化になれないピエロはいらない。
それでもピエロはピエロになろうと笑う。
真っ赤な海の中で笑う。
誰もいなければ、怖くない。
真っ赤な海に滴が落ちる。
笑いながらピエロが落とす。
誰も見てくれないピエロはいらない。
誰も見てくれないピエロはいらない。
笑いながら、滴をこぼす。
怯えた子供が、ピエロを見つめる。
ピエロはぎこちなく笑う。
子供はちっとも笑わない。
ずっと怯えたまま、ピエロの傍にいる。
立ち去らないで傍にいる。
ピエロの唯一の観客。
ピエロは笑わず、泣きだした。
笑えないピエロはピエロじゃない。
笑えないピエロ。
泣きだすピエロ。
誰も笑わない。
でも、唯一の観客が笑う。
「笑わなくていいよ」
ピエロは泣いた。
それから二人だけの舞踏会。
仮面を持たずにピエロは笑う。
ピエロはピエロじゃなくなった。