時計
僕は時間をみる。彼女が来るまでは後3時間あるな、と考えて、本屋に行く。すると最新のゲーム雑誌があったので一部買って退屈しのぎに読んでいた。
そろそろかな、と目をやって、それをバッグにしまう。来た彼女の服をみて、なかなかかわいい格好しているなあ、と思った。自然に笑顔になる。
「今日は、時計はつけていないのか」
「あなたがいれば時計はいらないからね」
「そういうと思っていた」
「じゃあ何で聞いたの」
「僕がいないときはどうするのかなあ、なんて思ってさ」
「えー別に問題ないはずだよ。あなたが時間通りにこない事なんてないもの」
「まったく」
「あなたが死ななければ私は別に不便ではないから」
「俺の存在は時計のみかよ」
「俺って言った。怒った?」
「すこし、な。だいたいなあ」
「いいじゃんいいじゃんもう、だったら私のこと嫌いっていえる?」
「いえないなあ…、ちくしょう足元見やがってこいつ」
「とにかく行こうよ」
「全く…お姫様そのものだな」
こんな会話を彼女としていた。あの日から3年。僕は今、あのときの本屋にいる。彼女は何か雑誌でもみているのだろうか、時間にルーズな様子だ。そのゆったりした感じが好きだった。だからこそつきあっていた彼女。今日も時計をしていない。付けていなくても平気、という彼女だが、僕は今となっては心配する。当時は何とも心配しなかったけれども。それこそ本気で彼女のそばにずっといるつもりだったくらいだったから。じゃあそんな僕が、なぜ心配しているのか?だって…