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顔 上巻

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その死体が車の持ち主である二之宮敏郎であることは
すぐに解ったが、その後、キャッシュカードで現金を引き出す
二之宮の姿がコンビニのCD機に搭載された監視カメラに映し出されている
のがわかったため、捜査は続行中だが迷宮入りとなった。

また、二ノ宮の所有していた六甲山中の別荘は
時を前後して火災にあい、消失した。
ネットなどでは、この事件は都市伝説化していた。
無責任なネット上の掲示板には二ノ宮の姿を
大阪あいりん地区で見た、などの書き込みが複数あった。
しかし、何らの根拠も無いため黙殺されていた。

捜査内容を事細かに詳らくことも無かったが
大阪府警は、あいりん地区での顔面を潰された連続殺人事件に
ついての情報を送ってきた。身元のわからないまま
顔面を叩き潰された男の遺体が数体あがったというのだが
これらの事件も迷宮入りしていた。

「そんな馬鹿な・・。」
大川は一之瀬の語るような野暮な出鱈目が、
まるで真実味を帯びてゆくのに寧ろ笑いが込み上げた。

捜査資料の裏に添付された遺体の写真は顔が真っ黒に炭化しており
さらに驚いたのが、二之宮敏郎の生前の写真だった。
それは一之瀬の今の顔とも異なっていた。
のっぺりとした顎の無い男の顔が写っていたのだ。
作品名:顔 上巻 作家名:平岩隆