顔 上巻
①顛末
公安部が取調べを担当した二人の刑事を呼び出した。
その後、詳細については、なにも語られることは無く
その日をもって、取調べ担当者大川と小山は、この件から外された。
その後、大川は、山中湖に程近い県境の駐在所に配置転換され、
定年を迎えた。
小山は警察内の小さな研究所の小さな仕事に回された。
捜査本部は解散、以後、警察内の研究機関によって残務整理がされた。
以後、マスコミは一切シャットアウトされ、あれだけ沸いていた
取材活動も、一切無くなった。
唯一、最後まで食い下がった三文記事屋は、軽微な罪で逮捕され、
その後、何も語らず、仏門に入った。
容疑者の家族は、その後、住まいを変えたが、不幸な火事に見舞われ
亡くなった。
アメリカの遺族の元にはCIAの下部組織を通じ、何らかの通知があり
法外な額の見舞金が日本国政府より支給されたと地元の報道
が一部に流れたが、遺族たちはどこかに移住してしまった。
強姦・殺人・遺体損壊事件の容疑者、一之瀬克也の件は消えた。
そして数ヶ月が経ち、人々の記憶から、事件は消えていった。