小さな花
少女は何ももっていませんでした。
毎日、起きては寝るだけ。
庭にある小さな花だけが、話し相手でした
。
「おはよう」少女が小さな花に話し掛けますが、小さな花は何もこたえません。
でも、少女はそれをさみしいとは思いませんでした。
少女は小さな花がそこにいてくれるだけで、幸せでした。
ある日、魔女が町へやって来ました。
その日も少女は小さな花に「おはよう」といいました。
すると、「おはよう…」とか細い声がきこえました。
魔女が小さな花に言葉をあたえたのです。
魔女は少女がいつもひとりでおはよう、をいっているのを可哀相だと思ったからです。
少女はおどろいて、
「ねぇ、あなた言葉がしゃべれるのね」
「そうです。魔女がわたしに言葉をくださったのです。」
小さな花はこたえました。
「まぁ、すてきね」
それからふたりはしばらくの間いっしょにいました。
少女はもう、ひとりではありませんでした。
毎日少女は小さな花に水をやり、話し掛けました。
小さな花も少女に心をひらき、ふたりは幸せでした。
しかしある日、魔女が町からいなくなりました。
魔女がいなくなったからです。
少女はいつも通り、「おはよう」と小さな花にいいました。
しかし、いつまでたっても返事はなく、小さな花は、ゆらゆら、風に揺れてるだけでした。
「おはよう、ねぇおはようってば…なんで何もいってくれないの?ねぇ!」
何も知らない少女は、怒って、小さな花を摘みとって、押し花にしてしまいました。
少女は小さな花と、ずっと一緒でした。
けれども、少女は不幸、でした。