悪魔の子/スティーブの手記
突然こんなことを言われても訳が分からないと思います。
ですがこれは真実なのです。
まず僕には念じるだけで人を殺す能力があります。
いえ、正しくは人を殺す能力ですね。
そのうち僕が望まなくでも人が死ぬようになるのですから。
同級生のピーターが死んだときのことを覚えていますか?
はい、チェーンソーの暴走で両足を失いその後落ちてきた鉄骨が顔を潰すという悲惨な死を遂げた少年です。
彼は僕が死ねと念じたから死んだのです。
その日僕はピーターとごく数人の同級生からいじめを受けました。
最も彼らにとっては大したことではなかったのだと思います。
ひと時のおふざけ、きっとそんな風に思っていたのだと思います。
だけど僕にとっては一瞬でも残酷な仕打ちだったのです。
だから僕は念じました。
ピーター、お前など死んでしまえ、足を切られて顔を潰されて死んでしまえ!
すると翌日放置された工事現場跡でピーターは死体になって発見されました。
そう、僕が念じた通りの死にざまで。
そして彼が死ぬときと同時刻僕の頭の中に彼が死ぬイメージが浮かびました。
しっかりと鮮明なイメージでした。
僕が殺したのはピーターだけじゃありません。
同級生のエレン、数学教師のマルロイ、近所のおばさんマチルダ。
彼らの死もまた僕が原因なのです。
もっとも僕が殺したのは彼らだけではありませんが。
おそらく僕がこの家にやってきてすぐに病死したというアメリア叔母さんの死も僕が原因です。
彼女の様に僕が望まなくても人が不幸になることがあります。
最近僕の学校で未知の病にかかって生徒や職員が次々と命を落としているのをご存じですか。
これもきっと僕が原因なのです。
なぜならこれもしっかりとイメージで見えるですから。
彼らが苦しみ、そして命を落とすまでが鮮明に。
なぜ僕の周りでは不幸ばかり起こるのか。
疑問に思った僕はいろいろ調べました。
そしてたどり着いた答えが悪魔の子。
つまり僕です。
まさかと思って調べてみましたが僕が生まれたのは8日の15時23分。
666ではありませんでした。
でもこれは本当の日付ではないですよね。
僕だってかなり深く調べました。
そして本当のことが分かりました。
僕が生まれたのは6日の6時6分。
そしてお父さん、お母さんあなた方は僕の本当の両親ではありませんね。
僕の本当の母親は裏山に住む魔女です。
そうですよね、僕の本当の母親は魔女として恐れられていたミネルバ・デーモンですよね。
町の中央で自らの体を焼き、そこに駆け付けた警官に保護されその後妊娠していることが分かり僕が生まれました。
父親は分かっていません。
もしかすると存在しないのかもしれません。
あなたがたは僕の本当の両親ではないけれど今まで僕を育ててくれたこととても感謝しています。
最近僕は定期的に意識を失います。
気を失っているわけではないのです。
”僕の意思”がないのです。
僕がいなくなった後の体を別の誰かが乗っ取るのです。
そのうちあなた方にも危害は及ぶでしょう。
あなたたちを、それも僕自身の手で殺めるなど僕には到底出来ません。
だから今日でお別れです。
今日までの日々ありがとうございました。
今度会うとき僕はもう悪魔の子かもしれません。
だけど心はいつもあなた方と一緒です。
あなた方の息子スティーブをいつまでも忘れないでください。
さようなら。
あなた方の息子スティーブ・セキュラ。
作品名:悪魔の子/スティーブの手記 作家名:逢坂愛発