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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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 この年頃の人間は皆、いやに打ち解けるのが早いものだ。あっという間に多数のグループが形成され、一年前までは互いに顔も知らなかった他人同士が気安く軽口を叩き合う。全く不思議なものだ。とは言うものの、この俺もその御多分にもれず、それなりに大きくてまとまりのあるグループの中にいるのだったが。
「なあ、桜見先生って美人だよなー。まだ若い上に、独身だろ」
「なー。この学校で一番の美女と言って良い!」
 そんな会話ばかり。
 俺は適当に相槌を打って、適当に笑って、適当に冗談を言っていれば良い。薄い付き合いの友人らとの掛け合いに、興味などなかった。いや、俺の興味は、学校にはなかったのかもしれない。人と人との交友の場である、学校には。
 …………。
 そんな風に、皆、グループに大体入り終えた頃――五月辺り。その頃になっても、いつも一人でいるような人間が、クラスに二人、いた。
 葉暮紅也(はぐれ こうや)に、咲屋灰良(さくや はいら)。
 一人は男子で、一人は女子。
 二人とも、いつ見ても一人で自分の席に腰掛けて、本を読んだりして静かに過ごしているようだった。紅也に話しかける女子は多かったが、咲屋に話しかける女子は少なかった。男子は、そもそもそういう二人のことには全く頓着していないようだった。
 いつだったか、女子らが数人で、咲屋について話しているのを聞いたことがある。優しくて良い子なんだけど、どこか近寄りがたいのだ、という内容だったことを覚えている。そう。正に、その言葉通りの生徒だった――咲屋は。
「さて。今日のHRは、席替えをしようと思う!」
 六月の中旬になって、桜見先生はある日そう言った。今までは出席番号の席順だったため、クラスは大いに盛り上がっていた。誰も、変化を厭うことなどしないのだ。例のはぐれ組(あ、これ、紅也の苗字だったな……)の二人は、その盛り上がりに参加するでもなく、おとなしく座っているだけだった。
「よし。じゃあ、くじ引きで決めよう」
 桜見先生の提案(もうすでにくじが用意されていたので提案と言えるかは分からないが)により、生徒は順々にくじを引いていく。俺もくじを引き、中身を確認する。番号は――……五番、か。
 場所確認のために、黒板に書かれた座席表の数字の傍に、自分の名前を書いて席に戻る。前後は、どうでも良い男子ら。右隣は、大黒とかいう女子。
 左は、と。
 大して興味もないのに、確認をする。左は……。
 咲屋灰良。
 ああそうだ、認めよう。
 このときから既に、俺とあいつの間には、縁が出来てしまったのだ。
 透明で、
 どこまでも澄み切った、
 無色でガラスのような、
 よく切れる刃物のような――……
 罰当たりと。