もみじふる
梅雨の晴れ間、昼下がりの町の道。
すれ違うのは同じ年頃の人が少し、多くはもう少し年長の人たち。
顔見知りの人には会釈。
知らない人でも、目が合えば微笑みを見せる。
戸惑ったように目を見開く人もいるけど、あまり気にしない。
近所を一回りして、時間もけっこう経った。
そろそろ帰ろうかな、と思ったその時、風が走り抜ける。
服を、髪を、ひとときだけ強く揺らす。
どこからか、たぶん近くの家のどこかから、
吹き飛ばされた葉っぱが一枚、鼻先に舞い落ちる。
はっとして受け止めた葉の形は、紅葉。
まだ赤く色づかない、緑色の。
形が崩れないよう、手の中にそっと握り込む。
この葉の樹があざやかに染まり、赤い葉が空気と地面を彩るであろう頃、
わたしの目の前にもまた紅葉があるはずだ。
小さな、ふたつの手のひらとして。
きっと無心に差し出されるその手を、今と同じく壊れないよう、
同時に確かな愛情を込めて、わたしは握るだろう。
その手がわたしを必要としなくなる時まで、否、それ以後も、
わたしが愛情をなくすことはないだろう。