小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ハロウィン・パーティー

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

魔法の宴


アレッサは人見知りで引っ込み思案。
彼女は久々に夜の町を歩いていた。
と言うのも親とケンカをして家を飛び出してきてしまったからだ。
時間が遅いため人々の姿はほとんどない。
「あ……黒猫」
彼女の目の前を黒猫が横切った。
なぜか黒猫に興味を惹かれその後を追ってみることにした。
黒猫は暗い路地の中を走っている。
本当はこんな不気味なところ通りたくはなかったのだが、なぜか追跡を止めるという行為が許せなかった。
その路地はまるで終わりがないようにどこまでもどこまでも続いていた。
何度も曲がり角は曲がったが、行き止まりは一度も見かけなかった。
この路地どこまで続いているの……?
黒猫を追ってきたこと後悔し始めたその時まばゆい光が視界に飛び込んできた。
曲がり角から光が漏れているらしい。
黒猫が光の中に飛び込んだ。
アレッサもそれを追って曲がり道を進む。
徐々に目が光になれてきて、その先の光景が見えてきた。
「えっ、うそ……」
自分の目を疑わずにはいられなかった。
なぜなら、そこは自分の住む世界とは異なる世界だったから。
魔女たちがホウキに乗って空を飛び、カボチャやガイコツが歩いている。
異界の者たちはパーティーでもしているのかとても楽しそうだ。
ここからでは何をしているのかまでは分からないが、それがとても楽しいということは分かる。
好奇心に諭され少しだけ覗いてみた。
「うわぁ、すごい……」
アレッサは目の前の幻想的な光景に目を奪われた。
明るい光に包まれた町には不思議な物がたくさん並んでいた。
色とりどりに飾られたカボチャがふわふわと浮遊している。
もっといろいろな物を見てみたくなって、異界の地に足を踏み出した。
「あら、あなた珍しい格好ね」
しまった……そう思った時には遅かった。
ゆっくりと声のした方向に顔を向ける。
お菓子入れを手に持った魔女がホウキにまたがりアレッサを見下ろしていた。
「あなたもしかして人間?」
道を通る他の者たちはアレッサのことなど気にしていない。
しかし目の前の魔女はアレッサに興味があるようだ。
「そ……そうよ」
怖々と答える。
「なんだぁ、どした〜?」
奥の方から魔女の友人らしき少年と少女がホウキに乗ってやって来た。
「この子人間みたい」
「へぇ、本当」
「君名前は?」
魔女に名前を聞かれ恐る恐る答えた。
「あ、アレッサです……」
そんなアレッサの様子を見て魔女たちは笑いだした。
「そんなビクビクしなくていいんだよ〜捕って食いやしないんだから」
魔女がニコニコと笑いながら言った。
「は、はぁ……」
まだ緊張は解けない。
「私はアンジェラ。彼はペティー。彼女はジェニファーよ」
「「よろしく」」
アンジェラは自己紹介を済ませると、アレッサの手を引いた。
「え……?」
突然のことにどうすればいいのか分からなかった。
「こんな場所じゃなんだから、カフェにでも行きましょう」
「えっちょっと……!」
アレッサの返事を聞かず、魔女たちは空へ舞い上がった。
「うわああああああ!」
アレッサは風にあおられ、喉の底から叫んだ。
魔女たちのホウキは大空へと舞い上がっていた。
「やっぱりハロウィンの夜の風は気持ちいわね」
アンジェラ達は気持ちよさそうに風に身を任せた。
「ちょっ、落ちる落ちる!」
アンジェラの手に掴まれたまま風に振り回され、アレッサは悲鳴を上げた。
「あ、ごめんごめん」
アンジェラは悪びれた様子もなく、アレッサを自分の後ろに座らせた。
「しっかりつかまっててよ、落ちちゃうからね」
「うん……」
「それじゃ、行くわよ!」
アンジェラの言葉を合図に魔女たちのホウキが急降下を始めた。
「うわあああああああ!」
アレッサの叫びが空に響き渡る。
だがそれは恐怖からのものではない。
感動によるものだ。
彼女は空を飛ぶなどという経験をしたことがない。
だからその初めての経験に感激の声を上げた。
「ねえ、アレッサ。何よその驚きよう、もしかしてあなた初めて?」
目的地を目指しながらアンジェラが語りかけてくる。
「始めても何も……人間はホウキじゃ空を飛べないのよ」
「へぇ……そうなんだ」
アンジェラは意外そうだった。
その表情からおそらく人間も何かしらの方法で空が飛べると思っていたことが分かる。
「ほらここよ」
アンジェラ達は美しい光の弾を纏った洋風の建物の前に降り立った。
「これが……カフェ?」
人間界のカフェとはまったく違った。
館と読んでも過言ではないだろう、その大きな建物の放つ不思議な魅力にアレッサはすぐさま囚われた。
「さっ、早く入りましょう」
アンジェラに諭され、アレッサ達は中に入った。
「うわぁ……!」
店内を妖精たちが飛びまわっていた。
それだけじゃない。
カップやテーブル……さらにはイスも浮遊しており、そこに座る客は空中でのティータイムを楽しんでいるようだ。
「あなたたちの世界と私たちの世界では異なる点が多い様ね」
「ええ。あなたたちの魔法の世界は本当に不思議よ」
「魔法がないなら、お前らはどうやって生活してるの?」
今度は逆に質問されアレッサはなんだか得意気な気持ちになった。
「それはね〜」
「ちょっと待って」
人間の世界について説明しようとしたアレッサをアンジェラが制した。
「面白い話はお茶を飲みながらよ」
アンジェラはフワっと飛びあがると浮いているイスに座った。
彼女がイスを招くような動作をすると周りに浮かんでいた三つのイスとテーブルが彼女の前に集合した。
「さあ、座って」
ペティーとジェニファーも軽々と飛ぶとイスに座った。
「あなたも早くおいでよ」
ジェニファーが急かすように言った。
「分かった」
そう言って飛びあがるもアンジェラ達の様に浮かびあがらない。
イスに到達するにはまだ全然ジャンプ力が足らない。
「無理よ」
「どうして?」
「ジャンプしても全然飛びあがらない、あなた達みたいに魔法が使えないのよ」
「だけどこれは練習しなくても使えるわよ」
「どうやって?」
「流れに身を任せるのよ、何も考えずに、体からも力を抜いて、そして念じるのよ体よ浮かべって」
「分かったわ」
アレッサは目を閉じて力を抜いた。
何も考えずに念じるのよ、体よ浮かべ……体よ浮かべ……。
「そして空間を思い切り蹴って!」
アレッサは目を閉じたまま飛ぶと何もない場所を蹴った。
「体よ浮かべ!」
すると蹴った反動で彼女の体は舞い上がった。
「やった!」
アンジェラは思わず叫んだ。
「集中をやめないで!」
「えっ?……うわっ!」
集中が乱れたためアレッサの体はまったく関係のない方向に飛んで行ってしまった。
しかしアンジェラの操るイスがアレッサの体を受け止めた。
「まったく……」
アンジェラが指でイスを招くとイスはゆっくりと元の場所に戻った。
「助かったわ、ありがとう」
「まったく、魔女騒がせな人ね」
アンジェラが呆れたように言った。
「えへへ……」
照れたように頭を掻くアレッサ。
「褒めてないって……まぁいいわ、お茶会を始めましょう」