死体は嗤う
男二人と女一人、それを見つめて話し合っている。
男A 「なんでこんなのがここにあるんだ?」
男B 「しらないよ。」
女C 「殺したのはわたしじゃないわ」
男A 「とにかく、このままじゃまずい」
男B 「かたづけなくちゃ。でも、おれはいやだ」
女C 「男のくせに何言ってるのよ。あんたたちがやってよ」
男A 「男だからって、いやなものはいやだ」
女C 「か弱い女のわたしにやらせるなんて言語道断よ」
男たち「誰がか弱いって?」
女C 「何よ。失礼ね!」
三人は死体を誰が片付けるかでもめていた。三人とも身に覚えがない。
しかし、風呂場には全裸の死体が……。それは紛れもない事実だった。
男B 「でも、おれが殺した訳じゃないし」
男A 「それならおれだって何もしてない」
女C 「じゃあ、なんでこんなところで死んでるのよ」
男たち「知らないよ」
女C 「わたしも知らないわよ」
女、眉をひそめて死体を見る。突っ伏して横たわっている死体は男か女かわからない。
二人の男はいやがって死体のそばに近寄らない。
そのまま死体は二日間放置された。
女C 「もういいかげん片付けないと、腐っちゃうわ」
男たち「だから、おれたちはいやだってば」
女C 「わたしだっていやなんだから」
女は半べそをかいている。
かつてしたいやな思いが浮かんできたのである。
そのときの手の感触がよみがえってきて、頭を抱えた。
死体を一瞥すると、まるでそれは女をあざ笑うかのようにぬれて光っている。
女C 「ふん。馬鹿にしないでよ」
女は意を決し、死体に立ち向かうことにした。
女は死体に手を伸ばした。
その手に握られているのは……
割り箸。
女は死体を割り箸でつまむと、窓を開け放ち、死体を外へ放り出した。
すると、男たちは拍手して喜んだ。
男たち「わ〜〜い。ありがとう。お母さん。ほんとに気持ち悪かったね」
女C 「何言ってるのよ。ふたりともヘタレなんだから。触るのもいやなのよね。ナメクジって」