イタリア女にクロエ
フリルのたっぷりついたワンピースがいいわ。真っ白で、コットンでできてるの。そうね、クロエにありそうな感じの。
「クロエ?」
「知らないの?」
疑問符が飛び交う室内はマニキュアの匂いが蔓延していた。リオは気分が悪くなり胃のあたりをニ三度さする。
「食あたり?云っとくけどさっきの昼食は私が作ったんじゃないわよ」
「知ってるよ」
お前の料理があんなに綺麗な見た目をしているはずが無い。最後の言葉は胸のうちにしまった。まだ命が惜しい年頃である。
「んで、クロエだっけ?」
「何が?」
マージョリーがそう返答するのでリオは絶句して、ディオの気持ちを思った。こんな姉を持ったらさぞ大変だろう。
「お前が欲しいって云ったワンピースのブランド」
小指の爪を刷毛が一撫でして、マージョリーはリオを見た。
「馬鹿な子、私はイタリア女よ。プッチに決まってるじゃない」
ため息もつくことが出来ず、リオはただただ立ち尽くすだけだった。