うすぐらい穴の中
ゆっくりと、穴の中。
死んでいくたくさんの生き物を思った。
なにもおまえたちは間違っちゃいないよ。俺が間違えただけだ。
だれかが云う。
じゃあ、間違いってなんだ。おまえのその感情は間違いなのか。
俺はいつもその問いに答えられない。
疲れると、まぶたがピクピク痙攣する。それを知ったのはいつだったか。
まるで全く別個の生命体のように、好き勝手に動くそこにキスをした。
涙の味がした。
当たり前だ。先ほどまで涙を流していたのだから。
死んでいく。
死んでいく。
俺に出来る予言は、この人も俺もいつか死ぬというものだけ。
その予言は一種購いだ。
「まぶた、まだピクピクしてる」
目を閉じたまま、息をはくように笑った。
「うん。もう寝ましょ。明日起きたら治ってるよ」
死んでいくいのちの責任はだれがとるのだろう。だれが傷つくのだろう。
女の子は、なぜいのちを宿すのか。
それは幸福なのか。
いのちを宿す彼女たちはいつだって自分が正しいという顔をするので、俺は戸惑ってしまう。
女を愛せない男がいた。
彼は女の横顔が嫌いだと云った。
いまようやく、その言葉の意味をわかろうとしている。