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里海いなみ
里海いなみ
novelistID. 18142
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【未完結】学校の怪談

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「あー…怖かった」
「まぁホラ、もう終わった事だし」

踊り場に立ち止まり、夏乃が身を震わせて言う。宥めるような動作をしながら苦笑を浮かべ蛍がそう言った。
やはり踊り場にも電気はついておらず、未だに携帯の灯りのみを頼りにしている。ふと、ディスプレイが明るく光った。

~♪~~♪

「誰?」
「あ、僕……うん、とりあえず出たくないかな」
「は?親?」

冬耶の手で携帯電話が着信を告げる。ピカピカと緑色の光を発しながら変わらずオルゴールのような音を出しながら携帯は振動を繰り返していた。
冬耶のみが目にすることのできるそのディスプレイには

『4444』

の数字。電話番号としては確実に機能するはずのない数字の羅列。夏乃と冬耶は変わらない表情でディスプレイを見ていた。理解できていない様子の幸樹と蛍はおかしな、としか表現のしようがない表情を浮かべ僅かに楽しそうな色を滲ませた二人の顔とディスプレイを交互に見ていた。

「これさ、メリーさんだよね?」
「多分ね」

どうしようか、そう呟くのと同時に、オルゴール調の音は止まり通話状態に切り替わる。ざーざー、と聞こえてくるのは砂嵐のようなそんな音で。四人は顔を見合わせた。すると、砂嵐のような音が一瞬にして静まり返り、通話口からは

『私、メリーさん。今、門の前にいるの』

くすくすという幼い少女の笑い声とともに、あどけない声がそう告げる。四人のいる位置からは門は見えず、実際に今メリーさんと名乗るこの声の主がいるのかどうかは確認できない。しかし、彼らの本能が逃げろと言っていた。

「…上に逃げよう」
「ん」

言うが早いか身を翻し、四人は階段を駆け上がった。
先陣を切って走るのは幸樹、それに夏乃、蛍、冬耶の順で走っていた。
ダダダダダ、と駆ける音が静まり返った真暗な廊下に響く。暗いので時折足元が不安定になるが、それでも走らなければいずれはメリーさんに追いつかれてしまうだろう。

~♪~~♪

「またきたー!」
「出たらダメだよ!」
「わかってるってば!」

再び鳴り出した携帯電話を握り締め、電源ボタンを力いっぱい押し付ける。が、電源は落ちずに延々と音楽は無常にも流れ続けた。やがて通話状態に切り替わる。先ほどと同じ砂嵐の音の後、幼い少女の笑い声と話し声が通話口から聞こえる。
四人は足を止めずにその声に耳を傾けた。

『私、メリーさん。今一階にいるの』

今は二階の踊り場、四人はわずかに走る速度を上げた。一階と二階の差といっても少ししか無いため、今のままのスピードではすぐに追いつかれてしまう。それで無くとも真暗な階段が恐怖心を煽るのだ、知らず知らずに足元が早まっても仕方ないだろう。

~♪~~♪

「なんで電源切れてくれないのー!」

冬耶はもはや半泣き状態だ。携帯電話は着信を知らせ続け、四人の足は走り続ける。そのため四人は気づかない、ディスプレイの表示された番号が

『427』

という三つの数字に変わっている事を。
今度は長く流れ続ける事は無く、すぐに通話状態に切り替わる。もう、誰の声が流れるのかはわかりきっているので、四人とも足を止めてその声に耳を貸すことはない。

『私、メリーさん。今二階にいるの』

「早!?」
「百メートル何秒なのよー!」
「五秒くらいじゃない?」
「えぇぇぇえええぇぇぇぇ!!」

軽い漫才もどきをしつつ走る四人の耳には確かに聞こえていた。今現在聞こえてはおかしい音、カツカツという陶器が廊下を歩く音…そう、人間ならば確実に出すことのない音が。
絶対に振り向いてはいけないと一人ひとり自分に言い聞かせ、四階へと続く階段へと足をかけた。
その時

~♪~~♪

「もうやだぁぁぁぁあああ!!」
「携帯捨てろよ!」

「無理!!」

走る足を止めて携帯を見つめた。絶叫して携帯のストラップを掴み振り回す冬耶に幸樹が的確ともいえる返事を返す。が、即答で、しかもかなりの大音量で否定が返ってきた。現代の中学生を表した人間がここに一人。
お決まりのように勝手に通話状態に切り替わる。今回は先ほどよりもさらに短くワンフレーズのみが流れた。ざざ、と短い砂嵐の音の後、少女の声が聞こえる。

『私、メリーさん。今…貴方達の後ろにいるの』

ドゴォ!!

振り向きざまに夏乃が足を思いっきり振り抜いた。上履きの先がメリーさんの頭部に直撃し、三十センチほどしか身長の無い小さな体は壁に叩きつけられた。その衝撃で体の露出している部分や顔などが欠けていく。
床に落ち、わずかに身じろぎするメリーさん。よく見ると髪は立派なブロンド、服はそでとすそがふんわりと広がった薔薇色のドレス。ひびが入り所々欠けてしまった顔は天使のように愛らしい。くりくりした瞳はエメラルドグリーン、ぷっくりとした唇は頬はうっすらと色づき愛らしさを強調している。が、その愛らしさゆえ今のひび割れ欠けてしまった姿は哀れさと恐怖を覚えさせる。
動けないメリーさんにつかつかと歩み寄り、幸樹は足を上げた。
ぐしゃ、という音とともにメリーさんの顔は踏み抜かれてしまった。元々夏乃の攻撃によってひびの入っていた顔部分、見事に粉々になっていた。
夏乃と幸樹の、嫌に爽やかな笑顔が怖い。

「……蛍ちゃん」
「うん」
「なんかそこの友情が怖くてメリーさんの方がかわいそうに思えるよ」
「……うん」

硬い握手を交わし、スポットライトでも当たっているかのように光り輝いている二人を、蛍と冬耶は恐ろしいものでも見るような目で見ていた。顔を踏み抜かれたメリーさんはもう動く気配は無く、その場に静かに横たわっていた。

「なんでいきなりこんな心霊現象が…?」
「そろそろ本気で帰りたいんだけど………」



二話 了