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里海いなみ
里海いなみ
novelistID. 18142
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【未完結】学校の怪談

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「こっくりさん、こっくりさんお越し下さい」

高低二つの声が霊を呼び出す為の呪文を唱えていた。
室内のカーテンは閉め切られ、電気が消されている。ある灯りと言えば小さなペンライトのみ。その頼りない光を受け、十円玉が僅かに反射しつつ紙の上に鎮座していた。
本来三人で行うべきこの儀式は二人で行われ、その二人を別の二人がジッと見つめていた。儀式を行っているのは二人の少女で、見守っているのは少女と少年だ。

「こっくりさん、こっくりさんお越し下さい」
「こっくりさん、こっく…!」

不自然に途切れた詠唱、息を呑む音、八つの目が見つめる中、ゆっくりとだが確実に十円玉は動いていた。少女たちの指が力を入れていないという証拠に、指先は白く変色していない。
紙の上を這う十円玉は、ある場所を目指して動いていた。

〔シ〕 〔ネ〕

死ね。

十円玉の示すその文字を目にした四人は、驚愕に言葉を失った。紙を這う音と、荒い息遣いだけが教室に木霊する。

「…こ、こっくりさん、貴方は誰ですか」

驚きと恐怖に震える声で一人がそう問い掛けた、ペンライトの光を反射して、眼鏡が光る。見守っていた少女と少年も、それぞれ自分の手を力いっぱい握り締める。

〔カ〕 〔ミ〕 〔サ〕 〔マ〕

バンッ!

「きゃぁぁ!?」
「うわっ!」

神様、そう動いた十円玉はまるで見えない何かに弾き飛ばされたように宙を舞った。その途端、一斉に灯りが消えた。廊下も、向かい側の校舎も。
暗闇と静寂が、教室を包む。

「神様、だって…」
「でもそもそもこういう遊びで神様が降りてくるか?」
「も、もう良いじゃん。怖いし帰ろうよ」

十円玉に手を置いていた少女―広瀬夏乃―がぽつりと呟いた。それにつられるようにしてもう一人の少女―如月冬耶―も自分の指を見ながら息を吐く。その呟きを聞いた少年―高橋幸樹―が疑問を口にし、その疑問に全員が同じように頷くが見守っていた少女―桐野蛍―の言葉に静かに立ち上がった。
昇降口までの廊下は暗く、スイッチを入れても明るくなる事はなかった。パタパタと上履きが廊下を叩く音のみが四人の耳に届く。ペンライトでは廊下を照らす事は出来ず、携帯のディスプレイで足許を照らしていた。
四人は、一階の踊り場に差し掛かった。


一話 了