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里海いなみ
里海いなみ
novelistID. 18142
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【未完結】学校の怪談

INDEX|17ページ/17ページ|

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「…」

「……」

「………」

「…………」

机…というかこっくりさんの用紙を囲み、無言でにらみつける。床に落ちていた十円玉は幸樹が拾い上げ用紙に乗せた。
一人ずつ指を乗せ、息を吸い込む。皆緊張してるのかわずかだが指先が震えていた。
そしてまた息を吸い、口を開いた。

「こっくりさんこっくりさん、お越しください」
「こっくりさんこっくりさん、お越しください」

声をそろえて唱える。十円玉はぴくりと動き、蛍が驚いたような声をあげる。そして十円玉は動き出した。
ゆるゆるとした速度だが、やはり向かっている先は初めと同じく

『シ』『ネ』

という二文字のところだろう。

「こっくりさんこっくりさん、お帰りください」
「こっくりさんこっくりさん、お帰りください」

『NO』

十円玉は『NO』の位置から動かない。
窓ガラスの向こうでは無数の手が蠢き、廊下では何かわからない何かがひっきりなしに走り回っている。蛍光灯はチカチカと点滅を繰り返している。
やはり、そう簡単には帰ってはくれないという事なのだろうか。

しかし火事場のバカ力と言うものは恐ろしい。

動かない十円玉を無理やり動かそうと力を加える。力が拮抗し、ぶるぶると四人の指と十円玉が震える。ぐ、と最後の一押しといわんばかりに力を込め、『YES』の方向へを動かした。
観念したように案外簡単に動いた十円玉が文字の上に乗った途端、全部の窓ガラスを叩くような、音楽室によくある太鼓をすべて打ち鳴らしたようなそんな音が鳴り、窓の外の無数の手、廊下を走り回る影は消えていた。

夏乃が紙を、冬耶が鉛筆を、幸樹が十円玉をそれぞれ手にした。


「紙は48に」

ビリッ、

「鉛筆は折り」

バキッ、

「十円玉は使う、だっけか?」


にぃ、と笑いながら十円玉を親指で跳ね上げた。
バラバラにされた紙と鉛筆はゴミ箱へと捨てられ、十円玉は幸樹のポケットへと入れられた。

「……一回花子さんのところ、帰ろうか」

誰とも無くそう言い、四人は鍵を開け教室を出た。

後に残るのは、静寂。

八話 了