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里海いなみ
里海いなみ
novelistID. 18142
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【未完結】学校の怪談

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花子さんに言われたとおり、こっくりさんをした教室へと歩き始めた四人。しかし、階段を二つほど降りればその教室に着くはずが、なかなか着かない。
まるで狐に化かされてるようだ、なんてありふれた表現しか出てこず、四人は黙った。
すると、蛍が声を上げた。

「…あの教室だったよ、ね?」

教室の上のほうに吊られているプレートには、『カウンセラー室』と書かれていた。
四人が始めにいた教室、つまりこっくりさんを行った教室だ。しかしここの階の表示は二階。カウンセラー室は一階だ。
早く終わらせたいという気持ちでいっぱいの四人は、それを意に介した様子もなくドアを開けて中へと入った。相変わらず電気は点かないようだ。

「ど、この机だった、っけー…」

ガシャン!

「きゃぁっ!?」

四人が完全に中へと入った瞬間、勢い良くドアが閉まった。窓の外にわずかに光が差し、中の様子が見えた。その部屋は、四人が見知ったカウンセラー室ではなく、まったく違った教室だった。
騙された、と思ったときにはすでに遅く、完全に閉じ込められてしまったようだ。
困惑気味な空気の中、幸樹が呟いた。

「…貴方は、生きていますか…?イエスなら、一回…ノーなら…二回叩い、て下さい…」

己の意思とは関係なく話しているようで、その目は焦点があっていない。
いきなり、窓の外が暗くなった。

…コンコン…。

「誰!?」
「窓の外!」
「…ここ、二階」

なるべく窓の外を見ないように、三人は幸樹へと近づく。立っているのに立たされているような、操り人形のようなその異様な姿に、全員言葉を無くす。
窓の外で、何かがいる気配が伝わってくる。しかしそれを目にしてしまったら、恐ろしいことになりそうで誰も窓のほうへ顔を向けようとはしなかった。

「貴方、は…死んでいる、ので、す…か?」

…コン…、

一回、つまり、イエス。
何かに気づいたように夏乃が叫んだ。

「これ、『ノックの手』だ!!」

『ノックの手』

都市伝説のひとつで、いきなり室内の誰かが質問を始める。オチを言えばたくさんの手が窓を叩き始める。割れてしまえばあの世に連れ去られる。退治法は不明。

夏乃が幸樹の口を塞ごうと手を伸ばす。が、見えない何かに阻まれるかのように一定の場所から動かない。

「…貴方、は、一人…です、か?」

…コンコン…。

「次の質問言わせないで!」

冬耶が叫び、夏乃が再度幸樹に向けて突進する。右腕を横に広げた状態、つまりラリアットを喰らわせるような感じで走った。しかし、それがかなうことは無く、やはり何かに阻まれてしまった。

幸樹の口が開き、

「…貴方たち、は、何人…ですか…?」

…コン…コンコン

コンコンコンコン

ドンドンドンドン

バンバンバンバン!

「っきゃぁぁぁぁぁああああ!?」

蛍が窓を見て叫ぶ。窓の外には無数の手が伸びており、それらがすべて窓を叩いていた。それはさっきトイレの外で見たようなさまざまな種類の手で、時折腐った肉片が窓にこびりついたまま取り残されていた。
ガラスはどれも、割れそうになっている。そのとき、ラリアットが成功した。

「ちょっといい加減目ェ覚ませばどう!?」
「…え、なにこの状況」
「お前のせいやっちゅーねん!!」

どうやら正気に戻ったらしい幸樹が頭を振りながら窓を見て言った。その場にいた全員がなぜか関西弁で突っ込む。
窓の外は相変わらず手が伸びているのだが一瞬その場の空気が和むが窓の大音響にかき消される。

冬耶が息を吸い込み、叫んだ。





「貴方たちは今すぐ帰ってくれますか!」





バンッ!



叫んだすぐ後、手が返事をするまえに一回叩いた。それもグーで殴ったため、ガラスと冬耶、両者ともに結構なダメージだ。
しかし、一度窓を叩く。それはイエスを意味することであり、手に拒否権は無い。
わずかに戸惑うように揺れた後、手は一つ一つゆっくりと消えていった。窓の外の明るさが元の明るさに変わる。
完全に閉まっていたドアもいつの間にか開いていて、四人はダッシュでその場から逃げ出した。


六話 了