僕に神様は居ない
第二章 君と僕と数馬
おそるおそるホカホカのご飯を持って部屋に入ってくる数馬は僕の様子を気にしているらしい。
それもそうだ。僕には多少なりと記憶がある。今、目の前に居る夕(やつ)の魂を知っている。
でも、夕は僕を知らない。いや。正確には忘れている・・・。
それがどんなに辛いことか数馬は知っているから僕の様子を気にしてるんだろう。
「ご、ごめん。話中断させちゃって・・・。」
反省したような声と瞳。
「いいよ。別に。・・・ご飯食べながら話せば良いことだからな。」
我ながら何だかんだで数馬には甘い気がする・・・。
もう何度魂を巡っただろう。
僕を必ず待っててくれる数馬。何故待っててくれるのかはわからない。
でも、僕は数馬が待っているから一人じゃない・・・。
「うん・・・」
まるで犬みたいなやつだよな・・・数馬って。
「せと・・・なんか優しい。」
なっ!!!失礼な!!!
「なんかってなんだよ!!僕はいつも優しいぞ!」
「せとって不思議だよね。俺に優しいのに数馬さんにはきつく当たったり優しくしたり・・・」
「せ、瀬斗は優しいよ!強くて優しい・・・。私とは比べ物にならないくらい優しいよ。」
ったく・・・こいつは相変わらずだな・・・。
「まぁ、数馬とは長い付き合いだからね。ほんと・・・長い付き合いだよ・・・。それに・・・」
「それに??」
「数馬の料理はいつもおいしいからね。」
「あ。それわかる!!このオムライスお店のみたいでおいしい!でも、親友なんだ!!いいなぁ〜。俺なんて親友居ないのに。一緒に馬鹿やる友達なら居たけどさ・・・。」
僕はそっちのが羨ましいよ。僕には数馬しか居なかった。そして君しか居なかった。
僕が何者でも関係なく接してくれるのは二人だけだった・・・いつも長い巡りの中・・・たった二つの魂だけだった。