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世界の終末で、蛇が見る夢。

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―― 時折、蛇の夢を見る。 ――




随分と気前よく霊力をくれてやったものだ。ギリギリまで奪われた気を補充してやりながら、そう思う。
命に関わるほどの気を奪う相手を許す、この人のやり方は、到底理解できない。
理解できないと思いながら、私も同族から見たら似たようなことをしているのだろうなと、少し嗤う。
ふと彼を抱き抱えていた私の手に、いつの間にか1枚の薄いディスクが挟まっているのに気がついた。ご丁寧にプラスチックのケースに収められた銀色のレーベルには、うっすらと碧(あお)い竜紋が浮いている。改めて検分するまでもなく、あの蛇の置きみやげだ。
成程。あの蠢く鱗はこういう役割も持っているのか。
霊的な物であるせいか、手にしただけでも僅かに中身が視えた。正確には視覚より触覚に訴える、映像というよりは波動のようなもの。全てではないにしろ、この人とあの蛇とのそれぞれの記憶や感情が記録されているようだ。
見ろというのか、この私に。それとも単に体(てい)のいい処分先か。どちらにしろ蛇の本心など判ろう筈もない。ただ、記憶を刻んだ鱗をディスクに仕立てるとは、古びた物の怪にしては…まあ気が利いていると思う。今まで犠牲者との記録はそうやって蓄積されているのだろう。

テーブルに置いたディスクを改めて見つめる。蛇の記録の一つになるはずだった、彼から引き出され、失われた記憶。

正直、観たくなどない。
しかし形容しがたい誘惑に、私は手を伸ばした。