神様HELP!
「え、ここで」
誰も居ない放課後の埃だらけの資料室で。『友達』と二人っていうだけならなんてことないけど。
対面で半ケツになってすげぇやる気になってるトコで止められるの、正直キツイ。
「キスしてねぇし」
押さえつけてもないし押し倒してもいないけど、普段より近い距離で見れば誤魔化すように目が泳いでるのがよく見える。
ここまできてなんでなのか分かんねぇし。
ムカつく訳じゃないけど、戸惑う。
「キスすればいいの」
「や、ほら。ガッコだろ」
「…誰もいねぇけど」
「あー、…そのさ。男同士だし」
すっごく気まずそうに視線を反らされ横を向かれた。
いまさら!? っつって叫びそうになった声、喉の奥で固まったよ。
はは、なんだ、これ。
口をついて出そうなナニかを無理やり飲み込む。
別に、俺もこいつも普通に女好きだし。こんな風になったの半分ノリだし。
「嫌なんだったらムリにしねぇけど」
体、退いた方がいいのか。ムリ、なんかすげぇ固まって動かせねぇ。
すごい近いトコで、あいつの視線が泳ぐのが見えた。見えちまった。
「嫌っつーか…。ほら、あれよ」
アレ…?
「あー、なんつーの。現実がさ。上手く飛べねーし」
「わかんないけど」
「あー、だから、ほら。もう、あのさ…!」
ナニ。いまさらもう何言われても驚かねぇけど。つーか、どうでもいいからさっさと言えよ。
「………お、」
お?
「落ち着いたとこでヤりてーんだよ! サカんじゃなくて、ちゃんと!!!」
「…は?」
「おかしいだろ! 笑えよ。なに乙女みてーなこと言ってんだってっ。お、俺だってまさかんなこと今更気にするなんて思ってもみなかったし!!」
「え、なに。よく、」
分かんねぇ。言ってるコト。
「だから!!!!! は、初めてなのにお前のこと以外気にしながらやりたくねーんだよ! お前だけ欲しいの!! ちくしょー!なんだよ、これ。乙女かっての」
うっわぁ、耳まで真っ赤だ。こいつが赤くなるトコ初めてみた。
てか、え?
それって、俺が、つまり…。
「悪ぃ。がっつきすぎた」
けど、
「いいけど。俺もまさかんなこと考えるとか思わねーし…」
真っ赤になったままうつむいてぼそぼそ喋くられて。
いつもバカ笑いしてるようなヤツなのに。
なにこれ。むちゃくちゃ可愛いんだけど。
つーかこれ見ておあずけ!? 出来んのか、俺!??
もしかしてナニかに試されてる!?????
「あのさ、」
「ん」
「キスだけしていい?」
「…ん」
嘘だろ。可愛過ぎだろ。キスだけで終れんのか!?
俯きがちのカサついた唇に口で触れた。
少し離れて、また触れる。舌で探ると薄く唇が開いた。
マジ可愛いんですけど。怒ると鬼のように怖ぇのに。
堪えられんのか、俺!?
つーか堪えろ。神様、信じてないけど力貸してヨ。
こいつのこと、マジで好きなんだよ!
俺を男にしてくれ!!!!!
舌で生ぬるく温かいあいつの舌を絡め取る。
止まらない快感。
くらりと目眩がする。
「…んっ」
息継ぎの間に小さな濡れた声。『あいつ』の。耳から犯される。
マジやばい。
止まんない。
神サマ、HELP!