お人形
私とあなたは似ているね。
顔も性格もまるで正反対。
それでも、私とあなたは似ているね。
例えば、人を殺したとき、あなたならどうする?
逃げる? 隠す? 自首する?
違うよね?
きっと、あなたならその死体を持って帰って部屋に飾るわ。
腐らないように、異臭がしないように加工して。
血糊も拭いて、きれいな衣装を着せて。
そう、まるでお人形のようにして飾るわ。
だって、私ならそうするもの。
小さいころから私とあなたは背中合わせ。
それでいてすぐ近くで生きてきた。
私が赤を好きと言えばあなたは青が好きと答える。
私が犬を好きと言えばあなたは猫が好きと答える。
まるで正反対。
でも、あの時あなたは私と同じ思いを抱いた。
生物を殺して加工を施した剥製。
それを見たとき、私もあなたも気味悪がることなんて無かった。
生まれて初めて美しいと思ったはず。そして、それこそ人のあるべき姿だと感じたはず。
人は死して飾られるべき存在だ。
犬畜生など、飾っても美しくない。
ありふれた存在、しかし一人ずつ違った形を持つ人間。
それこそ飾るにふさわしいもの。
はじめにお人形にしたのは、三つ下の可愛い妹だった。
私と同じ金の髪。福与かな頬。赤く弾力のある唇。愛らしい笑顔。
そして、エメラルドグリーンの瞳。
どれをとっても、まさに飾るにふさわしい存在だった。
それから私は町で見かけた美しく可憐な女を次々に攫い、飾った。
私が女の人形を集めているとき、あなたは男の人形を集めていた。
美男子と呼ぶにふさわしい男の人形が並ぶなか、あなたは至福を味わっていた。
私とあなたは似ているね。
何もかも正反対だったのに、それでも似ている私たち。
嗚呼、私は今、初めてあなたを好きになれそう。
日の光を反射する白銀の髪。長い睫毛。無駄な肉の無い肢体。
美しい、レモン色の瞳。
あなたは女のように柔らかくはないけれど。
しかし、女以上に美しい。
今まで飾ってきたお人形たちの背中には、醜い傷が残っているけれど、あなたに傷は残さない。
振り上げるのは斧ではなく、振りかざすのは睡眠ガス。
おやすみなさい、美しい人。
知っているわ、美しい人。
あなたも私を飾りたがっていたことを。
おやすみなさい、美しい人。
私の部屋に、一体の男の人形が飾られた。