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愛の果実

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愛の果実

 ねぇ、知っていますか?
 私が、どれくらいあなたのことを愛しているか。
 ねぇ、知っていますか?
 私が、あなたと知らない女が歩いていたのを見ていたことを。
 私がどんなに愛しても、あなたは私に答えてはくれない。
 ねぇ、知っていますか?
 あなたが私にうそをつくたび、私の中で黒い渦が生まれることを。
 ねぇ、知っていますか?
 あなたが知らない女と過ごしている時間、私がどんな思いをしているかを。
 私がどんなに願っても、あなたは私を冷たく突き放す。
 あなたと初めて逢ったとき、私の全身は熱く燃えた。
 運命って信じますか?
 いつか誰かに言われた台詞。
 私はあの時、その「運命」をあなたに感じたの。
 あなたは、どうだった?
 残酷な人。
 あの女に口付けたその唇で、私に愛を囁き、虜にした。
 ねぇ、私に言ったアイの言葉を何人の女に囁いたの?
 悲しい人。
 本当の愛を知らず、多くの女にアイを振りまいた。
 ねぇ、あなたの言葉はどこまでが本当なの?
 哀れな人。
 そんなあなたのために、私は鬼になってあげる。
 慌てふためき、恐怖に染まるあなたを見つめながら私は刃を振り上げる。
 可哀想な人。
 助けを求めても、そこにいるあなたがアイを囁いた女の死骸は助けてはくれない。
 狭い部屋の中。
 家畜のように這いずり回り逃げるあなたを私は追いかける。
 飛び散る液体。
 ツンと鼻につく鉄の臭い。
 そのどれもが私に現実を教えてくれる。
 ねぇ、知っていますか?
 私が、どれくらいあなたのことを愛しているか。
 私がどんなに愛しても、あなたは私に答えてはくれない。
 ねぇ、知っていますか?
 あなたが知らない女と過ごしている時間、私がどんな思いをしていたのかを。
 私がどんなに願っても、あなたは私を冷たく突き放す。
 鬼ごっこを始めて、どれくらい経過しただろう。
 部屋の壁は、もう元の色を残してはいない。
 そして、ついにあなたは動かなくなった。
 恐怖で見開いた眼をそのまま、あなたの体は冷えていく。
 私があなたを部屋中に並んだ女たちのように飾ってあげる。
 大丈夫。
 どんな姿になっても、私はあなたを
 アイシテル。
作品名:愛の果実 作家名:ちょん