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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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万引き・ドン引き・後に尾を引き

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時計を見ながら、スケジュールの確認をしていたあのころは、本当に身も心も疲れきっていて、だからこそあんな真似に走ったんだろうと思うが、とにかく俺は逃げ出したかった。じゃなかったら今頃、こんな裏路地にはいない。

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 たかが万引き、されど万引き、警察の追跡に疲労して、中華街に逃げ込んだらまるっきり気づかれず何とかやり過ごした。あの店の店長がバカでカメラなんか仕掛けていないのは知っていたから、あの店を狙ったので、顔が割れる心配はないが、まさか現行犯で追われるとは思わなかった。
 まあ、何とかしていればそのうち何とかなるはずではあるが、どうも不安になり、歩いていくと整形外科があり、そこで整形をしたのである。同時に会社にメールで辞表を提出する。全く後先のことはノープランで。キーが刺さったままのバイクなんかがなぜかほったらかしである。きっとどこか近くだからと油断したのだろう。尾崎豊の曲を頭の中で再生しながら、中華街をでる。山にはいると、そこには一軒の家がある。その家にはいろうとノックをし、反応がないのでドアノブを回すと、誰もいなかった。手紙がある。
 「皆さんさようなら、僕は死にます」
 自殺者の遺言状だった。
 
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 誰も持ち主がいないのかそれとも税務署が怠けているのか、ともかく誰も来ないで3年がすぎた。…どうということもなく、すぎている。なぜ生きていられるのかは大変疑問に思う。
 俺は久しぶりに外にでた。といっても整形したから誰も気づかないんじゃないかと思って、俺は別人になろうと心がけた。
 住民票を適当に書いて適当に受理され、バイトをいくつかこなしつつ、そのうち正社員になり、給料も安月給ではあったが食いつなぎながら夜はバーに入り浸っていた。バーで知り合った女性と談笑していた。ご結婚なさったとかで子供も居たらしいが、子供は亡くなってしまったそうで、それが遠因となって旦那さんとも別れ、現在はバツイチなのだという。
 その女性が、かつて好きだった男の話をする。
 「うちの会社には、蒸発しちゃった人が居て、メールで辞表がでたとかで、その後全く連絡が取れなくって、それであえないんだろうと泣いていたんだけど、周りは慰めようとして『無責任じゃないのあんな奴。よかったじゃん』って言ってくれたんです。でも、…何であんな去り方をしたんだろうって、今でも疑問で仕方ないって言うか…」

 俺は、その話をする女性の顔を見ながら、昔の記憶を思い返して、そのうち悲しくなって、泣き出してしまった。
 「どうしたんですか」
 「…いや、あなたの話を聞きながら、昔のバカだった頃を思い出してしまって」