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バイク乗り乙-鈴虫-

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 私は、折角見つけた鈴虫をただの虫としか思えない自分にガッカリした。
 秋晴れの空は青かったし、目に映る緑色は24色でも足りないぐらいに豊かだ。なのに鈴虫は虫になってしまった。『花鳥風月』に虫が混じっていないのは、きっとそういうことなんだろう。
 ベンチに戻り、通りすぎる車を眺めながら、コーヒーをすするとすっかり冷めていた。残ったコーヒーを一息に飲み干すとゴミ箱に入れて、バイクに乗った。
 ヘルメットをかぶり、エンジンをかけると、虫の声はまた聞こえなくなった。アクセルをゆっくりひねって、私は来た道を引き返した。
作品名:バイク乗り乙-鈴虫- 作家名:和家