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かいごさぶらい
かいごさぶらい
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かいごさぶらい<上>続(3)

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「あーびっくりした、し(死)ぬかとおも~た、あんたがわるいねんっ!」油断、その(1)

2005/6/2(木) 午後 0:39
某月某日 朝と夕食後には、母にお薬を飲ませなければならない。少し前までは、飲むのを嫌がっていたが、最近は、私もコツをつかんで、飲ませ上手になった。だが、これが油断であった。

「もうすぐ、学校(デイ施設)やから、薬飲んどこか?」

「はい、のまして」と、機嫌良く返事をしてくれた。

「はい、この小さいやつ、これは、00の薬やで」一粒ずつ、薬の効能を説明しながらだ。

「そ~うか、ちぃさいなっ」

「うん、簡単に飲めるよ」

「ほんまや!」と、母は私に口を大きく開けて見せる。

「はい、これも小さいやろぅ」

「なんのクスリや?」

「00の薬やで」

「のまなあかんかな~?」

「そら、飲んどいたら、楽やんか」

「そうかな~?」

「そうやで~、僕もさっき飲んだんやで」母は仕方なさそうに、口をあける。

「んん、、、」と頭をふりふりしながら、飲み込もうと一生懸命になる。その時。

「ごっふおー、ごっふおーっ」と母が顔赤らめ苦しそうに咳き込んだ。気管支にお湯が入ったのだ。咳き込んで母は苦しみの余り、嘔吐した。私は内心「しまった」と思いながら、慌てて、母の背中をさすったり、叩いたりして。

「お袋ちゃん、ご免な~、心配せんでも、もう、大丈夫やからな~」言いながら、ティシュで母の口を拭ってやる。

「ヒーぃヒーぃ、こっふーおん、ごっふおん!!」と母は何回か嘔吐した。しばらくして、ようやく、治まり。

「にいちゃん、クチがなぁ~ニガいねん~」涙目になる母。

「苦しかったか~御免な~、もう、飲まんで、え~からな」

「あーびっくりした、し(死)ぬかとおもう~たっ!、あんたがわるいねん!」涙をこぼしながら母が言う。

「そ~や、そ~や、僕が悪かった、もう、飲まんでえ~からな」言い訳は通用しない。一つ間違うと「死」につながる。「失敗学」と言う学問があるそうだ。1の事故には、29の要素が内在し、300の不注意がさらに内在しているそうだ(私の記憶違いであればお許しを)。母のケアに「油断」は許されないのだ。




   「あんたが、したん?」油断、その(2)

2005/6/3(金) 午後 0:33
某月某日 夕食後、母の顔が何時もと違う。はっと、した私。

「お袋ちゃん、下の入れ歯は?」

「あ~ん、あるやろー!」と、母が口を大きく開けて私に見せる。

「無いで~、何処やったん?」(しまった)と思い乍、聞く私。

「あったで~」と主張する母。

「して無いやんか~」(私の声はト~ンダウンする)。

「そのへんに、あるんとちゃうか?」と母。そう言えば、最近、下の入れ歯を、また、よくハズすようになっていた。デイでも、ヘルパーさんが、そのことを指摘していた。デイ用のカバンに「00さんの下の入れ歯」と書かれた紙包みが、別にして入れてあった。急いでカバンを探したが、見つからない。

「お袋ちゃん、今日な~、学校(デイ施設)から帰ってきたとき、入れ歯してたか?」

「ないのんか?わかれへん」かすかな望みは、デイで保管していてくれている、と思うことだ。

「そうか~、明日学校の人に聞いてみるわ」

「そうしたらえ~ねん」翌日、デイの迎えのヘルパーさんに、藁をも掴む思いで。

「すいません、母の下の入れ歯、施設で預かってませんか?」(駄目もとで聞いてみた)。

「えっ!、ありませんか、カバンに入ってませんでしたか?」と、ヘルパーさん。

「ありませんねん、何時もは、連絡帳のケースの中に一緒に入れて頂いていたんですが」

「そうです、00さん、最近、しょっちゅう、はずされますので。デイにはなかったです」

「お袋ちゃん、無いんやて」

「あんたが、したん?」と、悠然と母が言う。この1,2年、安心していたが、私の油断である。また、訪問歯医者に連絡しなければならない。下の入れ歯、4個目である。私は同じ失敗を何度も繰り返す、凡人であることを母から教わった。





  「どうするん?」おトイレ、その(1)

2005/6/6(月) 午前 11:15
某月某日 介護の基本は、排泄をいかに気持ちよく、そして「人」として、扱うかである。認知症の場合は、会話と楽しく排泄させてやることが特に大切だと、私は思う。(ヘルパーさんから教わったのだ。私は自分で出来ることと出来ない事がある事を母から教わった。ケアマネさんやヘルパーさんは、私の教師である。教材は母が毎日提供してくれる)。

「お袋ちゃん、おしっこ、無いか~」粗相をさせて、母に恥じを欠かせない為に、この声掛けは大事なことだと私は思っている。

「ん~、ないよ」

「しといたほうが、え~んちゃうか?」母を傷つけないように、、、。この辺が難しい。

「ない、ゆうーてるやろーっ!」と、母が私を睨む。

「そうか~」母が目覚めてから、そろそろ3時間ほどになる。いつもなら、おトイレの時間だ。と、そのとき。

「おしっこ、したいな~」と、母がぽつりと言う。

「やっぱり、おしっこやろう、はい、行こ~うか」

「いま、したなったんやでー、やっぱりてなんやっ!」(しまったー、余計な、ひと言、返す言葉を間違えた)。

「うん、いま、僕がな~、行こか~てっ、言うたんやがな」(言い訳は禁物、正直に)。

「きいてない!はよ、しんかいな!」(ちゃんと見抜かれているのだ)。おトイレへ、母を便座に座らせ、私は対面して、その場でしゃがみこむ。

「ちょろちょろちょろ~、ゆ~てる、でたわー、にいちゃん!」と、ニッコリ。

「良かったな~、元気な証拠やで!」

「そうか、ふふ~ん、げんきなんかな!」と、嬉しそうに。

「そらそうや、うんち、も、おしっこ、も出てるんやから、元気やねん!」

「にいちゃん、かしこいなーよ~しってるなー」

「お袋ちゃんのことやったら何でも、知ってるで~」トイレットペーパーを取りながら、母にさまざま語りかける。

「そんな、よ~けいらん」

「お尻、洗うたら、このぐらい、いるで」

「おゆがな~、きもちえーわ!」

「綺麗にしてくれてるんやで」

「へぇー、そんなことできるんかいな~、もう、え~ねんけどな~、これから、どうするん?」はい、もちろん、私が、お尻を拭かしてもらうのだ。





  「はよしんかいな、ばかにしてっ!」おトイレ、その(2)

2005/6/7(火) 午後 0:26
某月某日 寝る少し前は、母の機嫌を細心の注意を払って、損なわないようにしなければならない。おトイレ、洗顔、歯磨き、そして、気持ちよく「お休みなさい」を迎えさせてあげるのだ。気分良くおトイレを済ませてだ。

「お尻洗うたら、気持ちえ~やろ、綺麗になるしな~」私が笑顔で言う。

「うん、ぬくいわ、キレイになるなっ!」母も笑顔で答えてくれる。

「拭いたら、もっと綺麗になるで」

「そうや、キレイにしとかなあかんねん!」用を足し、母のパンツを上げる時、パンツが汚れているのに気付いた私。