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天使は微笑み、悪魔は嘲笑う

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Case1[屍食鬼―グール]PART1






―――ねぇ、知ってる?最近、街で起こってる連続殺人事件。

―知ってる、知ってる。アレでしょ?犯人が人間じゃなくて“化物”だ、ってやつでしょ?

―――そうそう!だって、死体が何かに食べられたみたいなんでしょ?

―噂では…ね。だから、犯人はグールじゃないかって。

―――グール?なにそれ?

―知らないの?グールっていうのはね、架空の化物で、死体を食べる鬼なんだよ。

―――えー、気持ち悪い。

―まぁ、噂だし。てか、本当に居るわけないじゃん。










「―――……ゃ!……うや!」

 誰だろう。何処からか声が聞える。意識がまどろんで身体も鉛のように重い。
頼むから邪魔をしないでくれ。もう少しだけこのまま……。

「…灯弥!起きなさいってば!!」
「ん……あと5分」
「それ、5分前にも聞いた」
「……あと、気分」
「どれだけ寝る気よ!」

 ゴン、でもなく、コツン、でもなく、ガンッと頭に衝撃が走る。
何か金属的なものが後頭部に当たったらしい。というか、当てられたらしい。

うぉ~、と後頭部を押さえ、悶え苦しむ俺。それを蔑む様に見下す幼馴染A(装備・文鎮)

「文鎮!?…ちょっと、待て。お前、文鎮って凶器じゃねぇか!!」
「あら、お目覚め?」
「お目覚めどころか、永久に眠りにつくかと思った」
「安心して。起きるまで殴り続けるから」
「死体にまで厳しい!?」

 冗談よ、と言って幼馴染Aこと、如月 遼子は答えた。
読者のために、遼子のプロフィールを簡単に教えてあげよう。普段は企業秘密だけどな。

 如月 遼子。千波谷(ちはや)学園高等部2年C組。学級委員長兼生徒会長という、教師と生徒から認められる最大の肩書きをもち、容姿端麗成績優秀文武両道の完璧女子。
人当たりも良く、生徒からも大人気。彼女と付き合おうと頑張って散った男子も数知れず。そう、人気もあって、人当たりも良いのだが、如何せん。性格がかなり捻くれている。
どのくらい捻くれているかというと……何と例えて良いのか分からないので、典型的なB型だと言っておこう。そして有名なツンデレである。
が、ツンデレと言っても、ツン9:1デレのドSさんである。人を文鎮で殴って起こすほどのお茶目さんでもある。他に、彼女の事を教えると言えば……。
何を隠そう、彼女は改造人間である!勿論嘘だ。嘘っぱちだ。改造人間ではないが、彼女の制服は指定の白セーラー服ではなく、赤セーラー服。
ようするに、改造制服である。リボンとかは黒で他は全部真っ赤。返り血でも浴びたのか、というくらいの真っ赤。ずっと眺めていると眼がチカチカする。
思い出すのが高校の入学式。あろう事か、初日からこの改造制服で登校したのだ。教師に何か言われるかと思いきや、不良でもなく所謂、優等生の部類である彼女を誰が諭す事ができるであろうか。
むしろ、逆に言いくるめられてしまうだろう。まぁ、そんな事もあり、彼女には「鮮血姫」「赤ずきん」など等、名誉ある仇名が付けられている。

「そんな彼女の歴史の一ページ、もとい、殺人リストに俺が加えられようとしていたのである。現在進行形で」
「何処見ながら言っているの?」
「画面の向こうの読者様」
「そんなもの、居る筈ないじゃない」
「酷い!!主人公の俺と作者に謝れ!!」
「あら、灯弥って主人公なの?立ち絵の無いモブキャラかと思ったわ」
「謝れ!俺に謝れ!」
「ちょっと、モブキャラは喋らないで」
「モブキャラじゃねぇーよ!!」
「まぁ、いいわ。それより早く行きましょ」
「…行くって何処に?」
「あら、モブキャラの分際でヒロインに質問するの?おこがましいわね」
「……もぅ、いい。やめてくれ」
「メンタルの弱いモブキャラね」

 物心ついた時からコイツに口喧嘩で勝った事が一度も無い。まぁ、負けてるわけでもない。俺のほうが大人だから、大人しく引き下がっているだけだ。

「負け惜しみは虚しいだけよ」
「俺の心の中を読むな!!」

 絶対、いつかギャフンと言わせてやる。

「だっふ○だ」
「予想の遥か斜め上を行った!?」
「満足したかしら?早く支度しなさい。現場が私を待っている」
「いつから熱血刑事キャラになったんだよ……って居ない!?」
「何しているの、モブキャラ。早く行くわよ」

 今、起こった事をありのままに話すぜ!。俺の直ぐ後ろに立っていたはずの遼子が何時の間にか教室の入り口に立っていたんだ。
瞬間移動とかマッハとかそんなチャチなもんじゃねぇ。何を言っているのか、俺にも分からない。だけど、俺はたった今、恐怖の片鱗を味わったぜ。

「最高にハイってやつね(棒)」
「……棒読みでありがとう」




「くっ!こうなったらプランBよ!」
「プランBってなんだ?」
「そんなものは無いわ!!」
「………なぁ、楽しいか?」
「えぇ、とても充実しているわ」

 そんなやり取りをしている俺達2人は現在進行形で現場に来ています。
現場というのは―――

「最近、多発している連続殺人現場の一番新しい殺人現場よ」
「……………」
「何かしら?そんな汚い目で私を見ないでくれる?」
「凄い侮辱された!!」
「………で、どうなのかしら?」
「…あぁ、やっぱりこの事件、“奴ら”が関わっている」
「そう。それが分かっただけでも収穫ね」

 街の喧騒から離れた路地裏。真っ赤な夕日が当たらない暗闇の世界。漂うのは腐敗臭と血の匂い。
地面には乾いた血と禍々しい爪痕だけが残されていた。

「さてと、私は帰るわ。後はよろしく“断罪者―ジャッジメント”」

「―――了解。“傍観者”」



「あら、いっちょ前に主人公気取り?」
「…頼むから、俺のプライドを圧し折らないでくれ」
「あら、あなたのプライドなんて爪楊枝程度の耐久力じゃない」
「…仕事前なのになんで俺、こんなに精神的追い込まれているんだ?
「仕事はちゃんとしなさいよ。じゃないと、私があなた事、殺すから」
「お前が言うと、冗談に聞えないから。というか、絶対にやるんだろうな。お前の事だから」
「殺されたくなければ、ちゃんと仕事はしなさいよ」
「へいへい、りょーかいですよ」










―――でも、恐いなー。

―そうだよね、もしかしたら私達も襲われちゃうかも。

―――前に襲われたのって、隣のクラスの子でしょ?マジで恐いって。

―でも、本当に犯人が化物だったら、“アレ”が見れるかも。

―――“アレ”って?

―知らないの?最近じゃ、この噂で持ちきりだよ。

―――どんな噂?

―この街には、左腕が天使、右腕が悪魔の黒コートが、裁けないモノを裁くって噂。

―――ナニソレ?

―詳しくは知らないし、見たって人も分からないから噂レベルなんだけどね…。

―――で、その黒コートが何してくれるの?

―だーかーら、言ったでしょ。裁けないモノを裁くって。

―――って事は、連続殺人の犯人も裁いてくれるの?

―…人じゃなければね。

―――うー…ん。まぁ、結局はその黒コート頼みだね。

―そーいう事。……あ。ヤバイヤバイ、バイトの時間じゃん!アタシ帰るね。まったねー!