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ラベンダー
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走れキャトル!(2)~魔術師 浅野俊介 第0章~

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「この猫ちゃん…上から降ってきたの。」
「振ってきた?」

圭一が驚いた顔をした。明良が圭一に言った。

「たぶん非常階段から飛び降りたんだな。」
「!なるほど…。すごいよキャトル。お手柄。」

圭一がキャトルに向いて言った。

「…命の恩人…キャトル…ありがとう。」

未希がキャトルを撫でながら言った。キャトルは目を閉じて気持ち良さそうにしている。

……

「「なりすましメール」言うてな。」

翌日、パソコンに詳しい木下雄一が、食堂でランチを食べながら圭一に言った。

「パソコンのメール機能を使えばできるんや。…ただ、向こうがどうやって未希ちゃんのメルアドを知ったのかはわからへんけど…。たぶん業者か、その手のサイトを使ったんちゃう?」
「…そんなに簡単に調べられるん?」
「調べようと思たらね。だからメルアドはできるだけこまめに変えた方がええんや。」
「…なるほど…」
「めんどくさいけどな。」

圭一は笑ってうなずいた。そしてスープを飲んだ。雄一が続けた。

「未希ちゃんはもう落ち着いたん?」
「うん。今日は休んでるけど…」
「…沢原さんの元カノかぁ…。まだいっぱいいるんやろうなぁ…」

その雄一の言葉に、圭一は表情を暗くして言った。

「沢原さん…未希ちゃんと別れるようなこと言うてた…」
「…えっ!?」
「…キャトルがおれへんかったら刺されてたって…。今日話するって…」
「じゃ、もしかして今頃…」

圭一がうなずいた。

「でも…別れへんと思うねん。未希ちゃんが離さへんと思うから。」
「ん…そうやな。…きっと大丈夫や。」
「うん。」

2人は微笑みあうと、ランチを食べ始めた。

……

(やっぱり無理だったか…)

沢原はプロダクションの自室で、ソファーに座りため息をついた。

ノックの音がした。
沢原は我に返って、立ち上がりドアを開いた。
圭一が息を切らしながら、子猫キャトルを手に抱いて立っていた。

「帰ってたんですね!」

沢原はうなずいて、圭一を中へ入れた。

「キャトル」

沢原が微笑んで手を差し出した。キャトルは沢原の手に飛び移った。
沢原はキャトルを撫でながら、ソファーに座った。

「キャトルが階段を凄い勢いで駆け上がって行くから、ついて行ってみたんですよ。そしたらこの部屋の前でちょこんと座って…。」

圭一が向かいのソファーに座って、笑いながら言った。

「まだ帰ってないよ…って言ったんですけど、動かないから…。キャトルの感ってすごい。」
「そうだな…。」

沢原がキャトルを膝に乗せて撫でながら言った。

「…未希ちゃんとは…どうなりました?」

圭一が心配そうに尋ねた。
沢原は苦笑しながら首を振った。

「…別れるなんて…やっぱりできなかったよ。」
「良かった!…」

圭一の言葉に、沢原は再び苦笑した。

「…俺の方が未希に惚れてしまってるのかもしれない…。なんかしゃくだけど。」

沢原がそう言うとキャトルが目を閉じたまま「ふう」とため息をついた。
沢原が驚き、圭一が手を叩いて笑った。

「!?…え?…今、キャトル、ため息ついた?」
「しゃくだなんて言ったからですよ。きっと。」

圭一が腹をかかえて、笑いながら言った。

「そうなのか?…不思議な子だなぁ…お前…」

沢原も笑いながらそう言い、キャトルを撫でた。
キャトルは気持ち良さそうに目を閉じている。

(終)