朧木君の非日常生活(6)
「さて、本日何回目か分からない本題に入ろうじゃないか」
本当に何回目だろうね?
「蜘戒さん、さっそくだけどお願いしてもいいかい?」
「はい・・・・・・分かりました。私、先日『私』を見たんです。本当に醜くて・・・・・・直ぐ逃げ出しました。けど、後からゆっくり考えたら・・・・・・おかしいなって思いまして・・・・・・相談に来ました。相談に来た私も醜いですよね・・・・・・」
ていうか、ゆっくり考えなくてもおかしいだろ!って突っ込みは控えておこう。そういう人なんだよね?
「ドッペルゲンガー」
蜻蛉さんが、口を少し吊あげ呟いた。
「ドッペルゲンガー? さっき言ってた?」
それしかないよな。
「そう、そのドッペルゲンガーだよ、朧木くん」
「それじゃ、蜘戒さんは・・・・・・」
「僕にはなんとも言えないよ」
「蜘戒さん、本当に自分を見たの?」
ドッペルゲンガーなんて空想の世界だと思っていた。だって、似ている人は確かにいるだろうけど・・・・・・自分を見るなんて・・・・・・
「はい・・・・・・確かに私でした。間違いありません」
「朧木くん、信じてあげなよ。だから、この世は楽しいんだからね」
一瞬の沈黙が場を包み、続けるよ、と蜻蛉さんが話し始めた。
「ドッペルゲンガーとは凄く曖昧なものでね、民間伝承として伝えられるもの、医学的な解釈、実例・・・・・・様々なものがあるんだ。まぁ、ドッペルゲンガーと言えばどうしてもオカルト的な考えが優先されてしまうけどね」
「解決策はあるの? 蜻蛉さん」
「んー・・・・・・どうだろうね。ま、なるようになるさ」
楽観的だな、本当に。
そして蜻蛉さんは続けた。
「朧木くん、本当にこの世は面白いよね。何が起きるか分からない」
俺は平和がいいんだけどね。
「快刀、乱麻を断つ、そう言わせてみせるよ」
蜻蛉さんは、そう話を締めくくった。
作品名:朧木君の非日常生活(6) 作家名:たし