壊せる絶対法則
薄暗い……。
地下室のようなコンクリで固められた場所だ。
目の間に導火線がある。
男がいる。
「俺は悪人だ!」
悪人が言う。
「この導火線の先には爆弾がある。爆発すればお前は死んでしまうだろう。だけど、お前は火を消そうとはしないさ。お前はそういう人間だからな。はっはっは!」
笑いながらそういって、悪人は導火線に火をつけた。
そして、部屋から出ていった。
俺は焦ったどこに爆弾があるのかを探した。
あった!
自分の足元だ!
それを取ろうとして動こうと……ん?動けない?
よく見ると、体が固定されてる。
四肢が十字架のようなものに固定されて身動き一つ取れない。
やばい!やばい!
なんとかして固定具を外そうとする。
でも普段運動もしていないような自分に、大きなボルトでとめられた革製のベルトをはずすことなんてできないだろう。
それでもあがいたが、数十分して諦めた。
「……あぁ。やっぱり自分はこんなこともできない人間なんだ。」
そうぽつりとつぶやいて、自分は諦めた。
導火線の火が、あの爆弾にたどり着くまで30分ぐらいだろうか……。
自分の人生の幕引きまでのカウントダウンなんて興味もない。
ただ惰性で生きてきた俺がいなくたって世界はまわる。
高校の頃にならった物理なんて、俺が何をしようが変わることのない絶対的な法則なんだ。
あがいても世界は変わらない。むしろ世界が俺を変えていく。
リンゴが落ちたって、うらしま太郎がとしくったって、別世界と何かがぶつかったって、俺はただ世界に流されて世界のいいような形にされるだけだ。
それは自然界の大きな流れからすればただ当たり前のことで、ここで俺が死ぬことに誰も悲しみはしない。
俺は世界全体からすればいらない人間だ。
俺がいなくなれば死ぬべきでない人が一人助かるかもしれない。
だからこの世界はどうでもいい。
どっかの科学者がなんかの法則を覆しても、俺自身が覆ることはない。
俺は、俺だ。
誰でもない、俺だ。
だから、死ぬんだ。
未練なんてない。あるなら、腹が減ってることぐらいか。
そんなこと、世界からすれば些細な事に過ぎない。
死ぬことで悲しむやつはいない。
俺の名前を呼んでくれるやつもいない。
そんなちんけな命。
「爆弾で死ぬぐらいのどうでもいい命。くれてやるさ、世界にな。」
導火線の火が、爆弾に達して……