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国家は捨てたふりが御上手

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 この、トリコという言葉を見るたびに、俺は思い出さずにはいられないのだ。あの、西洋の、欺瞞に満ちた、人の臭気でうんざりする、そして飾り立てることばかりが得意な国家を。
少しばかりの首を、恭しく人民に掲げて、そして全てが人民のものになったような面をして、その実何にも変わっちゃいないのだ、あの詭弁の国は。それはつまり、飾り立ててデコルテを強調するようなドレスから、質素な生地の、それでいて流行のデザインのドレスへ着替えただけなのだ!
そうして愚かな、情熱をもてあました人々をうまくてのひらの上で転がして、彼らの思い通りの、教会にも貴族にもとらわれないような新しい”共和”国のように装うあの国を俺ははげしく嫌悪する。
どうして未だに”侯爵”がいるのに”共和”国足りえるのか。全ての貴族の、その汚らわしい血で贖うこともせず、どうして新しいものがうまれるのか?
世界には供物が必要である。新しいものは古いものを屠った上で築き上げられる。その死は、その罪は語り継がれ、そうしてそれらを否定して、今を肯定するのではないか?

知っているか?あの国家は、人民の前で粗末な衣服を着て、自由と平等を嘯き、そうして前とちっとも変わらぬ、猥雑ささえ感じるドレスを着て、「下々のあいだでは最近革命ごっことやらが流行しているそうよ」と扇子で口元を隠し貴族に話しかけるのだ。

全部捨てたふりをしている。
あの太陽王の時代のものを、何もかも脱ぎ捨て、新しい”我々の国”、になったように振舞っている。しかしその実何にも捨てちゃいないのだ。全部、輿入れ道具のようにぞろぞろと持ったまま新しさを表面だけ装っている。
ああ、俺達はこの国が、俺達のためにならないとき倒す権利があるという。人々はその権利を誇らしげに語る。しかし、お前。あの窓の奥を見てみろ。あそこに貴族がいる。荘園を持った貴族がいる。結局のところ、俺らは一度だって国家を転覆も打倒もしちゃいないのだ。
この”トリコロール”。お前、昔の国旗を覚えているだろう。
俺らはあれを簡単にしただけの、この三色旗を誇らしげに掲げる。けど、何にも変わっちゃいないのだ。ああ、国旗さえ変えられなかったのだよ、俺らの命では。