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ヴィヴィアン・ガールズたちの父親

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 こころは、バラバラに引き裂かれている。いま、ひとつの鋏が手のうちにある。この鋏で、あなたをバラバラに引き裂いてしまいたいと思う。布を裁断するように、その皮膚に。知っていますか?解剖実験のとき、魚の肛門からメスを入れる。そのほうが滑らかに刃が滑るからだ。いや、そんなことはどうでも良くて。
こころはバラバラで、ひとつはあなたを愛するこころで、ひとつはあなたを憎むこころだ。あなたは知らない。毎日あのおんぼろ病院に通い、薄汚いロッカーでみすぼらしい作業着に着替え掃除をする清掃夫のことを。彼は丁寧に、階段を一段一段モップがけし、それからよぼよぼのじいさんどもが汚したトイレを磨く。そんなことを一日繰り返し、くたくたになって、家に帰りつくと粗末な夕食にありつき、それから”cute”で溢れたスクラップ・ブックを眺め、自分の生み出した”ヴィヴィアン・ガールズ”を戦いの世界に導く。毎日、毎日、神が休んだ日、あの幸いなる休日以外はうんざりする、ルーティン・ワークを繰り返す男のことを知らない。
男は死んだ。あなたがこの手紙を読んでいるという事は、つまりそういうことだ。
さようなら。
愛すべき”ヴィヴィアン”のひとり、右から二人目の女の子は、あなたを意識して描いたものだ。
どうだろう。
彼女には、男の愛と憎悪がつまっている。つまり、それは男の彼女への思いだ。
さようなら。
見知らぬ白衣の人。