なみだがほしい
ひどい目をしていると思った、春のはじまり
だれだろう、思った
誰かをまっているようで、校庭の片隅で、ぼんやりとたっていた
まだ春ははじまったばかりで、風も夕方になるとつめたかった
(そうして、彼の目を見たのだ、)
つめたいとかじゃない
何もうつっていない目だった
刺すような視線の先には、グラウンドがひろがっているだけだった
きっとこの人は笑いながら罵倒するタイプの人間だと私は確信した
ひどいことをする人の目だった
彼はどうやら私が見ていることに気付いたらしく、にやりと口角をあげた
その笑いかたがどうしようもなく不気味で、私は彼のことが忘れられなくなった
(春がはじまったのに、彼はいつでも冬なんだ)
近づきたいとも、優しくしようとも思わなかった
ただ、ぐちゃぐちゃにするのを、手伝いたいと思った
(眼球、眼球)