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ある、雨の日のこと。

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降ってきて当たった雨のひと粒目が、鼻の頭に当たると、恋がかなうんだって。

誰が言った言葉だっけ?あ、漫画にあった言葉だったかも。
学校からの帰り道、
今にも泣き出しそうな空を見上げて、あたしはこんな言葉を思い出した。

うーん、おまじない?ジンクス?だかなんだか、よくわからないけど。
なんの根拠もない言葉だ。

そもそも、好きな相手もいないあたしには無関係なものなんだけれども。

ぽつり、ぽつり

「あ、いま」

―あたったかも。

何の根拠もない言葉、信じてるわけじゃないけど。

「ちょっと嬉しい」

一人でつぶやき、ぼーっと、空を見上げ続けた。

だけど、暗いグレイが見えていたはずの視界に、綺麗な空色が突然うつる。
あれ。ふしぎ。

「なにボーっとしてるんだ、ばか」

「…、みやの、くん?」

視線を少しずらすと、見えたのは、あたしの頭上に空色の傘をさしている隣の席の宮野くんだった。

「どうしたの?」
「どうしたの、じゃない、おまえがアホ面して濡れながら立ってるのが見えたから」
「…んん??」
「風邪ひく……じゃなくて、べ、別に心配だったとか!そんなのじゃない!」

どきり、どきり

「え、あ、ありが、とう?」
「お、おー」

あの、何の根拠もない言葉。
信じちゃう日が来るのも、意外と、すぐかもしれない?
作品名:ある、雨の日のこと。 作家名:しあ