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おれと先生

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青春って何だろう。って考えるときりがない。


眼鏡を掛けてちょっとイケズで、勉強大好きなクールなA曰く、
「俺の青春は勉強だ。目指せ現役東大生ってね」とのこと。

校則破って髪を脱色して、女の子好きで、かっこいいB曰く、
「青春? それは女の子といちゃいちゃすることにかぎるね」とのこと。

アニメ大好きで、趣味の事になるといやに饒舌な、おたくのC曰く、
「青春とはアニメにある」とのこと。

朝は五時から夜は十時まで筋トレをする、筋肉馬鹿そして熱血なD曰く、
「青春とは運動、もしくは友情だ!」とのこと。









「でさ、結局俺は考えたわけよ」
「何を?」
「俺の青春は先生だってね」

照れるのを隠してふふん、となるべく不遜に言う。
先生は、丸付けをする手を止めて答案用紙をじっと見つめた。
気のせいか、なんとなく手が震えている気がする。 そう言えば、先生は恥ずかしがりやさんなのだ。 初めて俺が先生に思いを告げたとき、 「けしからん!」とか顔を真っ赤にして俺を怒ったんだけど、 瞳がうるうるしていて試しに先生の眼鏡を外し頤を持ち上げてちゅ、 って唇を合わせてみたら、さらに、ゆでたこみたいに顔を真っ赤にして 「高校生のくせに生意気だ!」 とか言いつつも俺のシャツをすげー力で握りしめていた。 キレられたかな、って思ったんだけど本当はそうじゃなくて照れていたらしい。 俺が「先生のことが好きです。けど先生の迷惑になりたくないから、諦めます。 でも俺の気持ちは本気だったってことは信じてください」 って頭を下げたら、先生は耳をすませなきゃ聞き取れないような、 小さい声で「本気だったってもう本気じゃないのか? もう諦めるのか? 俺の唇を奪ったくせに!」って言って、ぼろぼろに崩れ落ちた。 先生は、冷酷で非情で嫌味で鬼畜で五分の魂?なんのこと? なんて勢いで教室内に入ってきた虫を殺すような人だったから、俺は吃驚した。 端正な顔がぼろぼろに崩れて、切れ長の瞳は涙でぐしゃぐしゃで、 ブローした髪はぼさぼさで、いつもかっこよくて綺麗な先生とは全く違う人だった (、別に俺は先生の顔に惚れたんじゃないけど)。 それで、ああ、この人も俺が好きなんだってわかってぎゅーって抱きしめて 熱いキスを送るとしょぼーんってしていたのが嘘みたいに、 強い力で俺を剥がして勢い余って俺は尻餅。 あ、やっぱ急かしすぎたかな、って思って先生の顔を見上げるともう 郵便ポスト真っ青なくらい真っ赤で、そこで恥ずかしがりやさんなんだと 発見したのである。


「……2点」
「へ?」

ぺらり。 先生の可愛さを思い出してにやにやしていた俺は、急に現実を見せられて固まった。
先生が掲げたのは、既に丸付けを終えたプリント。 答案欄に隙間無くぎっしり答えを書いているにもかかわらず、無情な×印の数。 どうやったらそんなに間違えるの、と尋ねたくなるような惨劇である。 この高校の国語テストは記述が多いことが特徴的であるが、 その分記述問題は部分点が貰え考えようによっちゃあかなりお得であるが、 答えと全く見当違いなことを書くと部分点は勿論貰えない。

「これ、俺の?」
「相河省吾って奴が他にもいるならしらん」
「デート、なしな」
「へ?」

ちょっと待って。それどういうことよ先生!
俺は思わず身を乗り出して先生に問い詰めたけれど、 先生は眼鏡を直して眉を潜めて「忘れたのか?」と低い声で尋ね返した。

「えええ、なんでよ俺忘れてねえじゃん。学期末終わったらそのあとデートだって。 俺映画券兄からせしめて、もうレストランも予約済みだよ!!! そんでそのまま先生の家に泊まりだろ? んで、いちゃいちゃするって約束したじゃん!!! 」
いちゃいちゃ、という言葉を強調すると先生の白い頬にちょっと朱が入った。
けど、先生の薄い唇から出た言葉は低い。

「やっぱり、お前忘れてるだろ。テストが半分以上だったら、 デートも………俺ん家でいちゃいちゃもするっていったこと」
「あ……」

ふらっしゅばっく。ちょうど2週間前(、付き合ってから一年目のあの日)に、 「先生の家にいってもいい?」と首を傾げた俺に先生は 「期末の国語が半分以上だったらデートして、 そのあと俺ん家に泊まりにきてもいい」っていったのだ。
楽しみにしてたのに。くりすます。 ちゃんと24日の24時に先生と繋がってそんでこっそりバイトして買った リングを渡して先生の真っ赤になった顔をみながら仕合わせなクリスマスを 満喫しようとしていたのに。 デートは何か何百年も一人だったとかいう奴をみて、 見終わったあとに「俺も先生に出会うまでずっと一人だったんです。 誰と一緒にいても俺は孤独だった」とかいって口説こうと思っていたのに!

「は、ああ…クリスマスが……」

肩を落とした俺に、先生はまたもや溜息をつく。 そして、俺の目の前に落とされたテスト用紙を拾い上げしゃしゃ、 と付け加え机の上に置いた。 そんで「次のテスト、がんばれよ」とだけ残して、踵を返し教室から出て行った。
冷たい人だ。恥ずかしがりやのくせに。 本当は「俺の青春は先生だ!」とかいったとき嬉しくて震えてたくせに!
テストを疎かにした自分が悪いってくらい承知してるけど、 つい先生を恨み批難の声をあげてしまう。 だって、いいじゃないか。 せっかくのクリスマスくらい勉強を忘れていちゃいちゃいちゃいちゃしたって……。

「結局、学生の本文は勉強にありってか。……どんな青春だよ」

のっそり立ち上がって俺も溜息。 去年だって、先生は出張だとだけ残して 一緒にクリスマスを過ごすことはできなかった。 仕事だから仕方がないって俺は自分自身にいいきかせたんだけど。 それだけに今年のクリスマスは凄く楽しみにしていた。 なんか、先生って俺のこと本当に好きなのかな。 正直未だにキスもさせてくれないし、や、さしてくれるか。 テストが良かったときだけ。なんだそれって感じ。 もしかして学年一を争う馬鹿な俺の成績を向上するために先生は付き合って くれんのかな。

せっかくテストが終わったのに、俺の気分はブルーだ。
先生が言ったことだし、って俺も重い腰をあげる。
そんとき、机に置かれた俺の答案用紙をみて俺は言葉を失った。





「ちょ、せんせ…先生ってば!!!」

すぐさま、教室を出て先生のあとを追う。 向かうところは図書室って分かっていたから直ぐ先生に追いついた。 けれど逃げようとする先生。 俺は腕を掴んで、俺は無理矢理振り向かせ、そして抱きしめた。 やっぱり先生の顔は赤い。恥ずかしがりや。 けど、誰も、すくなくてもこの学校にいる俺以外の奴は先生が こんな恥ずかしがりやで赤面症だなんてしらないんだろうな。 なんだかそれって凄い優越感だ。あーあ、素直になればいいのに。 先生が腕の中で藻掻く。俺は力を込めて閉じこめる。腕の中に。 先生は観念したようで、抵抗をやめた。 けど、代わりに本当に、やっぱり小さな声で「俺だって楽しみにしてるんだよ」って。

まあ、クリスマスまでみっちり放課後補習が入るわけだが先生と二人っきりだし、 とりあえずやっぱり俺の青春は先生そのものだってこと。
作品名:おれと先生 作家名:あおい