藪のむこう
藪のむこう側
この藪のむこうに何があるのか知りたくないですか。
ほら、足元に小さな隙間があるでしょう。
そこにその疲れた手を差し込み左右にきつく開くのです。
ねばついても、それはあなたの掌から出るものではなくきっと蜘蛛の棲家です。
かきわけた隙間は闇が絡み合っています。
けれども、あなたはあの人も言う明日を信じ、腹ばいになって進むのです。
足をばたつかせ、地の魚になるのです。
あなたは、あなたのその指が、いつしか枝を離れ水のごとく土をかいているのを知ります。
あなたは顔こわばらせ、涙に似た液体をしたたらせ、
戻ることが出来ない場所を遥かに知るのです。
かっての陽の在り処を思い出し、かなしくかなしく己が胸に身を沈めるのです。
母よ父よ私はあなたの子供です。
この藪のむこうに何があるのか知りたくないですか。
私は戻りたい。