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フレンドボーイ42
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白城黒友・紅葉随想悲嘆

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秋なんだからって必ず悲しまなきゃいけないって言う訳じゃないんだろうけれど、少なくとも僕は先祖代々のDNAのせいで、秋になると訳もなく悲しい思い出が頭をよぎるので、すこしうざったいなあ、という気持ちで胸がいっぱいになり、秋に楽しいことはないだろうかと、身の回りを見渡せば焼き芋を売っているから買いに行って、結局ふつうにかって、食べて、…たかがそれしきのことしかしてないのに、おいしい思いをしているのに何でこんなに胸がつかえるんだ。芋は良く噛んでたべたからには、きっと泣く一歩手前なんだろうが、僕は実際のところ秋には悲しい思いなど一つもしていない。
 僕の名前を言い忘れてしまった。僕は、白城黒友という男である。しろき、くろとも。なにを意味する名前なんだろうか?とにかく名字でなく名前に黒があるのは『ぬらりひょんの孫』の黒田坊だけでいいと思う。黒という感じから想像されるのは余りよくないイメージだ。たとえばマンガのキャラで言えば、間黒男(はざま・くろお=ブラック・ジャック)なんかがいるけれど、彼ほど不幸な男は現実世界でもそう多くはいないだろう。…などとこんなたわいもないことを考えるのも決まって秋である。まあそれはそれとして。
 僕の友達が難病に冒されて死んだのは夏だった。彼女が交通事故でなくなったのは冬だった。母親が突如家を出て行方不明になったのは春だ。秋はバカ騒ぎやったり、乱痴気騒ぎやったり、テストでいい点取ったり、欲しいゲームソフトを祖母に買ってもらったりとまったくつらい思い出なんてない。むしろいろいろと良い思い出ばかりがある。…しかしながら、春も夏も冬も、基本的には、あのときからもうこんなに立ったのか、とか感慨に思うことはあっても、せいぜい天国で幸せになってろよとか、そんなことでおわりで、何であのとき俺はああ言ってやれなかったんだろう、なんて、無駄と言われそうなほどに悔やんだり苦悩したりするのは、きまって脈絡もなく秋だった。
 まあ、僕が暇になるのは秋だ。というか世の中全般的に秋ほど暇な季節はない。また、秋ほど哲学関連所が書店に並ぶ季節はない。哲学の秋、とはよく言ったものだ。
 こんなことばかり考えていても仕方ない。久しぶりに向こうの世界にでも行くか。向こうなら少なくとも「無駄に生きている」時間は存在しない。だからといって向こうにばかりいてもいいわけでなく、僕はこちらにもポジションがある男だ。まあ、今日は土曜だから、明日は休みだ。ちょっとばかしぶらりと一夜、行こうじゃないか。