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蛇の目

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⑦川辺



インタビューを受ける「山本権造」が高齢なこともあって。
また、かなり我が侭な性格もあって、インタビューの時間は限られる。
夜ともなれば、浮いたネオンも何も無い、いやコンビニすらないここでは。
他にすることも無くインタビューのオコシをする。

しかしそれとて、元の時間が短いので、たいした時間は要すことは無い。
一応、ビデオを見ながら起こすのであるがなんら変哲の無い絵ヅラで。
ただ、一箇所、気になる絵があった。

幸造氏に怒りの声を上げた「山本権造」の口から飛び出した舌が
異常に長いことだ。ただそのときは、画像が乱れていることもあって
たいした気にも留めなかった。

翌日、午前中は谷のほうに散歩に行ってみた。
玄戒川まで深く落ち込む断崖絶壁で、ゆえに見晴らしがよかった。
このあたりはいわゆる「川辺んち」のあたりで。
川辺側からみた「山本権造」像というのはどんなものか、というのを
聞いてみたかったこともあって。

小川をわたり、滝につながる水路に鯉と金魚等の養殖場がある。
町会議員には会えなかったが、その親類と云う養殖場の初老の男に
話が聞けた。
「オレぇ?議員の惣太郎さんの従兄弟んあたるっぺ。
山本権造ぉ?あれんジジイにはウチはえらい迷惑してきたからなぁ。
ウチは元々、新潟の方にいた家系らしいんだな。アレん爺、てゅうか
山本の家からすると流れモンらしいんだな、ったってぇさぁ、
もう何代も前の話でさ。
ずっと川辺ン家は山本家に小作人としてぇ、虐げられてきたんだっぺ。」
作品名:蛇の目 作家名:平岩隆