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幼馴染パロ 短編集2

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身の程を、知るといい



<身の程を、知るといい>

「あんな化け物だったなんて聞いてねぇよ!」
「なんなんだよあれ!絶対人間じゃねぇ!」

細い路地裏で男たちが口々に叫びあう。
制服を着ているが、その服のところどころには泥や砂が付着し、破れたり血が滲んでいる部分もある。
どう見ても喧嘩してきました、という姿だ。
幸いあたりに人影はなく、男たちの声は誰にも届いてはいない。
たった1人の少年以外には。

「ちくしょう、あいつを倒せば俺たちの名も上がるってもんなのによぉ」
「ちっ、木刀ぐらいじゃ無理だ。ナイフとか持ってくか?」
「おぉ、あともっと人数集めようぜ、一斉にかかりゃあいつだって・・平和島だって袋叩きにしてやるぜ!」
「ぜってぇぶっ殺してやる!」

口汚く静雄を罵りながら、息巻いて話し合う男たちを、隣の雑居ビルの上から見下ろして帝人はため息をついた。
こんなところで話し合って誰にも聞かれてないなんて本気で思っているのだろうか。
そして、自分たちが仕掛けた喧嘩だというのに、撃退されたから復讐してやる、なんて馬鹿な条理が通じるとでも思っているのか。
はふ、と息をつく帝人の下で、男たちは次第にヒートアップして、ナイフだのバットだの火炎瓶ぐらいなら、なんて話まで出ている。

「他にもさ、弱みとかねぇのかあいつ」
「えぇと俺が聞いたことあんのは、ずっと一緒にいるやつがいるらしいぜ。スゲー名前だったような・・・」
「あ、俺見たことある!ひょろくてちっせーの!あいつ捕まえて囮にするとかどうよ!?」
「いーんじゃねぇ!?平和島の前で痛めつけてやろうぜ!」


「馬鹿じゃないの?」


自分たちの意見に顔を赤くして拳を握る男たちの頭上から、まだ幼さの残る少し高めの声が降ってきた。
一斉に顔を上げた男たちの目に映ったのは、静雄と同じ水色の制服姿の少年。
男のうちの1人が、その姿を見て指をさした。

「あ、あいつ!あいつだ!平和島とよく一緒にいる!」
「マジかよ!?へーえ、マジで弱そうじゃん」
「ははっ、おーい僕ぅ、俺たちと一緒に来いよ。つーかそっから降りて来い。遊んでやるぜ?」

帝人の姿を見て、男たちが口々に野次を飛ばす。
ビルの横につけられた非常階段、その一番の上の階で、手すりにもたれかかった状態の帝人はそんな男たちの姿を睥睨し鼻を鳴らした。

「知ってますか?弱い人ほどよく吠えるんですよ。そして徒党を組みたがる。あなたたちのように」

見た目だけは可愛らしく微笑みながら告げられた言葉に、男たちは一瞬で気色ばむ。
数の上でも、強さでも、男たちは帝人より確実に上だ。
だというのに馬鹿にするような言葉を投げかけられたことで怒気をあらわにした。

「んだとてめぇ、ちょーし乗ってんじゃねぇぞ!」
「来る気がねぇなら引きずりおろしてやるよ!捕まってからひぃひぃ泣いて命乞いしても容赦しねぇぞ!」

下から吠えられる声に、帝人は面倒くさそうに顔を顰めた。

「だから吠えないでくださいよ。弱いことが露見しますよ?それでなくても、その頭は大して使いものにもなっていないようですし」
「馬鹿にしてんのかてめぇ!」
「そりゃしますよ。あなたたちが静雄に喧嘩をしかけなければ、そんな怪我を負うこともなかったんですよ。自分たちから吹っかけておいて、やられたら復讐とか息巻くなんて・・・想像力も覚悟もない、ただの馬鹿以外の何に見えるって言うんです?」

呆れた、とポーズをとる帝人に、男たちが階段を登ろうと動き出す。
その動きをみて、帝人は「ストップ」と声をかけた。

「あぁ?なんだ急に怖くなったかおちびさんよ!」
「ちょーしこいてすいませんでしたって頭擦りつけさせてやるよ!」

はははと笑い声を上げる男たちに、帝人はそっと一本指を指した。

「そこ、危ないですよ。それからこちらもどうぞ」

そう告げると、帝人は足元に置いてあったタンクを持ち上げ、下へと向けた。
タンクから一気に液体が流れだし、男たちの頭上へと滝のように落ちる。

「うっ、うわぁぁぁっ!」
「なんだ・・・っ、てめぇ、なにしやがる!」

全員が液体を振り払おうと、顔を服の裾でぬぐい、頭を振って滴を飛ばした。
比較的液体が落ちる量が少なかった男の1人が、階段を駆け上がろうとする。
だが次の瞬間、帝人の言葉で男たちは一斉に動きを止めた。


「危ないですよ。それ、ガソリンですから・・・ね」


驚きに目を見張る男たちだったが、柔らかく微笑む帝人の姿に、「そんな馬鹿な」という思いが強くなる。
こんな幼い見た目をした少年が、人にガソリンをぶっかけたりするだろうか。
驚きと計算、そして言いようのない不安感に顔を見合わせる男たちへ、再度帝人は口を開いた。

「ちなみに、階段にも半分くらいは掛けてます。方向的にここへあなたたちは来るだろうと思ったので、先回りして撒いておきました。ちょっと危険ですけどね」

階段の下まで来ていた男が、恐る恐る足元を見ると、そこは日陰になっていたが確かに階段が濡れているのはわかった。
濡れて黒く光っている階段から、じわりと後ずさりをして離れる。
その様子を見て、帝人は「よかった」と笑った。

作品名:幼馴染パロ 短編集2 作家名:ジグ