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幼馴染パロ 短編集2

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できるものなら、着てみなよ・雨の日は、体温が恋しくなるものです



<できるものなら、着てみなよ>

「これ、違う。絶対、違う。なに、これ」
「何で片言になってるの臨也?」
「帝人ー。俺腹減った」
「うるさいシズちゃんは黙れ。え、違くない?俺が知ってるペアルックってもっと違うものだったんだけど気のせい?」

びよーんと自分のTシャツの裾を両手で引っ張る。
確実に見たことがある生地、臨也の目にはユニ○ロの白い無地Tシャツにしか見えない。

「うるさいのはてめぇだ。文句言うなら出てけ」
「やだよ、シズちゃんが出てけ。いやそうじゃなくてさ、俺ペアルックがしたいって言ったよね」
「そうだね、臨也があまりにも言うから頑張ったんだけど・・・気にいらないの?」

不思議そうに首を傾げる帝人に対して、不可解である、という視線を向ける。
下に履いているズボンも均一商品の黒ズボンだ。
確かに3人とも同じ素材の服を上下ともに着ているわけなんだけれど、ユニ○ロ商品でペアルックとはいかがなものか。
しかも

「確実にペアじゃないよね。だって名前書いてるもんね」
「誰のかわからなくなったら困るでしょ」
「わかるよ!?いくら洗濯しても俺らサイズS・M・Lじゃん!」
「いいえ、僕はMになる」
「そんな決意した眼差し向けられてもさ・・・現段階でSなんだから意味ないっていうか」
「俺は帝人の意思を尊重するぞ。だから腹減ったんだが」

ぎゅーぐるると鳴るお腹を情けない顔で静雄が撫でる。
その手のひら部分には「お」の文字。
そしてその上には「ず」さらに上には「し」の文字が。
未だにびよーんと生地の伸縮性に挑んでいる臨也の白いTシャツには、毛筆でデカデカと縦書きで「いざや」の文字。
当然帝人は胸を張って同じ字体で書かれた「みかど」Tシャツを着ている。

「なんで名前書いちゃったの。なんでこれをペアルックと呼ぶの」
「女の子じゃないんだから、友達でペアルックとか無理だよ恥ずかしい」
「大きく名前入ったこのTシャツよりは恥ずかしくないよ!?」
「腹減った・・・・」

きゅるると可愛い音までなり始めたお腹を押さえてしゃがみこむ静雄の背中にも、どこかの作品だろうかと思うほど堂々とした「しずお」の文字が。
引っ張りすぎて裾が伸びたTシャツを情けない目で見つめてため息をついた臨也に、落ち着いた声で帝人が

「どんだけイケメンでもこのTシャツはダサいね・・・この似合ってなさが面白いなぁ」
「え、俺イケメン?知ってたけどありがとう!帝人君に言われると喜びも倍増だよ!」
「あはは都合のいい耳だね臨也」

帝人の背中部分にある「ど」の文字に額をぐりぐりと押し付けながら、静雄は自分の服を見下ろす。


(早く・・飯・・・・つかこのTシャツも案外いいと思うんだが・・・飯・・)



<雨の日は、体温が恋しくなるものです>

「だからさぁ無謀だって。シズちゃん半分ぐらい濡れてんだからもういいじゃん。傘から出てよ」
「てめぇが出ろ」
「シズちゃんのが幅取ってんじゃん。にょきにょきデカくなっちゃってさー、ほら帝人君が濡れたらどうすんの。出てよ」
「だからてめぇが出りゃいいじゃねぇか!」
「俺よりシズちゃんのがデカいんだから邪魔なんだってば!」
「もー、いい加減に両側で叫ぶのやめてよ・・・」

地面にたたきつける勢いで雨が降っている。
アスファルトにぶつかって跳ね返った滴が、足元からふくらはぎまで制服を重く濡らしていた。
突発的なゲリラ豪雨だった。
天気予報は晴れのち曇り、降水確率20パーセント。当然誰も傘なんて持っていなかった。
放課後に入って降り出した雨に、置き傘まで誰かに奪われてしまう悲劇。
本来なら傘立てに入っていたはずの帝人のビニール傘は、もはや戻ってはこないだろう。

「まぁ僕の傘は諦めるとして、静雄は傘なんて持ってないし」
「あー・・すぐ折っちまうしなぁ」
「野蛮シズちゃーん。その点ほら!俺はすごいでしょ?ちゃんと傘持ってきてたんだし!」
「折り畳みの置き傘ね」

普通の傘と違って折り畳みは小さい。
その小さな傘に3人が肩を寄せ合って入ると、それでなくても上背があるせいで静雄と臨也の肩はびしょ濡れになっていた。
間に挟まれている帝人は足元以外は無事だ。
臨也は帝人の腰に、静雄は肩に腕を回してくっついている。
一番背の高い静雄が傘を持つのが普通だけれど、それで最初学校を出たらすぐに帝人と自分のほうへ傘を傾けたので臨也が全身雨に打たれた。
文句を言って傘を奪った臨也が、今度は静雄を押し出すように傘を傾けたので、仕方なく腕を目一杯伸ばして帝人が持つことにした。
おかげで明日は腕が筋肉痛になりそうだ。

「っていうか2人とも歩くの遅くない?僕に合わせてくれなくてもいいんだよ?」
「これ以上早足になると、もっと濡れるよ」
「こういうのはどうだ、俺が帝人を抱き上げるから帝人はそのまま傘持つってのは」
「それ俺が入ってない」
「走って帰ればいいだろノミ虫」
「は?逆じゃない?俺が帝人君抱っこするし、シズちゃんは全力ダッシュで家帰って途中でコケろ」
「てめぇがコケろ」
「あー、もう2人ともうるさいってば・・・」

帝人の頭の上で、バチバチと視線同士で戦争が行われている。
途中のコンビニで傘を買えばいい、と提案した帝人の案は、体冷えるしさっさと家帰ろうと2人の主張によって却下された。
でもこんなのんびりしたスピードなら買った方がよかったんじゃ?と内心で不思議に思う。
2人がぎゅうぎゅうくっついているせいで、寒くはないというのがせめてもだけれど。

「あ、帝人君帰ったら一緒にお風呂入ろう!シズちゃんのせいで俺濡れちゃったし、帝人君も風邪ひいたら大変だから一緒にはいろ!」
「てめぇのは自業自得だ!1人で勝手に入れ!」
「でも静雄も濡れちゃってるし、3人で入る・・のはさすがにキツイよね」
「・・・」
「・・・」
「みんなお風呂の大きさ同じぐらいだよね。どうせ隣の家なんだし、それぞれ自分の家のお風呂入ればいいんじゃないの?」
「・・・うん、そうだね・・・」
「そうか・・・」

普段よりもゆっくしたスローペースのまま、ぎゅうぎゅうにくっつきあった3人が家に帰るまではまだ時間がかかりそうだった。


((外で堂々とくっつけるチャンス、逃してなるものか・・・!))

作品名:幼馴染パロ 短編集2 作家名:ジグ