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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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薔薇のお茶 いかが?

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ぽかぽかと暖かい春の日です。
 ひっこしてきたばかりのわたしの家のポストに、ピンク色のかわいい手紙が入っていました。
 それは、ハーブティー専門の喫茶店からで、お茶会の招待状でした。

 『 ○月○日 午後三時
  開店記念のお茶会を開きますので、
  ご招待致します。
  とっておきのバラのお茶をご用意して
  お待ちしています。
  どうぞ、お気軽にお越しください』

「バラのお茶? すてきだわ。いってみようかしら」
 わたしは、わくわくしました。
 だって、ここで誰かと友だちになれたらいいじゃありませんか。
 ところが、そのあとの文面を見てがっかりしたのです。

 『追伸 必ず仲のいいお友だちをひとり 
  さそってきてください』

「困ったわ。お茶会は明日よ。まだ友だちなんていないのに」
 わたしはため息をついて、手紙をテーブルにおくと、二階に上がりました。
 それから、部屋の窓を大きく開けて、荷物の整理を始めました。
 遠くに水平線がかすみ、ゆるやかな風が、ほんのり海の香りを運んでくれます。
(こんないいお天気の日に家の中にいるなんて、もったいないわね)
 そんなことを思いながら、クローゼットに服をしまっていたときです。
 突然、窓からぱたぱたと小鳥が飛び込んできて、わたしの肩に止まりました。
 赤や緑の鮮やかな色は、ボタンインコです。
「まあ、あなた、どこからきたの?」
 わたしが尋ねると、小鳥は「ピイッ」と、甲高い声で鳴きました。
 とてもなれているようなので、わたしはそのまま外に出て、飼い主を捜すことにしました。そうすれば、その人と友だちになれるかもしれません。
 いっしょにお茶会に行けたら、どんなにすてきでしょう。
 ここは、丘を切り拓いたばかりの新興住宅地で、まだ、ところどころに数えるほどしか家は建っていません。
 まず、一番近いお宅に行ってみました。でも、留守でした。少し先のお隣も。
 何軒かまわりましたが、みんな留守なので、わたしはあきらめて、家にもどりました。
「しかたがないわ。お茶会はあきらめましょう。別の日にいけばいいわ」
 そのとき、ずっとわたしの肩に止まっていた小鳥が、「ピイーッ」と鳴きました。
「そうだわ。いい考えがある!」
 わたしは、ぽんと手を打ちました。
 それから、部屋の片づけも楽しい気分でどんどんはかどり、お茶会に着ていく服も決めました。
 
 さて、お茶会の当日です。
 わたしは三時少し前に家を出ました。いっしょに連れていく友だちは、迷子のインコです。
 昨日、ずっといっしょにいたので、わたしたちはすっかり仲良しになりました。
 
 丘のてっぺんにある喫茶店は、赤い屋根に白く塗った煉瓦の壁のかわいらしい造りです。
 木立に囲まれたたたずまいは、まるで、お菓子の家のようです。
 まだ『準備中』のプレートがかかっています。
 わたしはドアの横のベンチに腰掛けて待つことにしました。
 インコはずっと肩の上にちょこんととまっています。ちっとも逃げ出すようすはありません。
 わたしが指をだすと、くちばしで軽く噛むような仕草をします。
 そうして遊んでいるうちに、犬を連れた年輩の男の人がやってきました。
「こんにちわ。この犬は、もしかしたらあなたの犬ではありませんか?」
 わたしは驚きました。わたしの方が、その人に、インコの飼い主かと聞きたかったのですから。
「いいえ」
「そうですか。昨日、わたしの家の庭に迷い込んできたのですよ」
「まあ、このインコも、なんですよ」
 その人と話していると、猫を抱いた中年の婦人がやってきました。
「こんにちは、あなた方のうちのどちらか、この猫ちゃんの飼い主さんじゃありませんか?」
 やっぱり猫も迷子でした。
 次に、サルを肩にのせた若い男の人が来ました。そして、その人も同じことを聞いたのです。
「この猿の飼い主は……」
 私たちの答えも同じです。
「いいえ、ちがいます」
 続いて、モモンガやプレイリードッグやオウムを連れた人たちが、次々にやってきたのです。
 動物はみんな迷子でしたが、不思議なことに、だれ一人、どの動物の飼い主でもありません。
「でもねえ、せっかくのご招待ですから、わたしはこの猫ちゃんといっしょに来たんですの」
 中年の婦人が猫をなでながら言ったので、
「そうなんです。わたしもです」
と、わたしが答えると、ほかの人たちも口々に、同じことを言いました。
「じゃあ、いったい、この動物たちの飼い主はだれなんでしょうな」
 年配の男の人がいうと、みんなは同時に首をかしげました。
 そのとき、鈴の音とともにドアが開いて、バラの甘い香りが漂ってきました。
「ようこそ」
 若いマスターが、さわやかな笑顔で迎えてくれました。
 すると、わたしの肩に止まっていた小鳥が、マスターの方へ飛んでいったのです。
 ほかの動物たちも、いっせいにマスターの方へ行きました。
 みんな、ぽかんとしてマスターを見つめています。
 マスターはにこやかな顔で言いました。
「失礼しました。みなさんをご招待するために、わたしのペットたちに協力してもらったのです」
 なんてすてきな方法を、マスターは考えたのでしょう。
「まあ、粋なことをなさいますね」
 老婦人がにっこり笑って言うと、その場に集まった人たちもうなずきました。

 お茶とお菓子が運ばれてくると、自己紹介が始まりました。
 アトリエを建てた、若い画家の鈴木さん。退職したので、自給自足で暮らすという小栗さんご夫妻。別荘なので週末に来るという、声楽家の若宮さん。
 すてきな人たちや自然に囲まれて、これからは楽しいお話が、たくさん書けそうです。
 さあ、わたしの番になりました。
「花森わかな。童話作家です。よろしくお願いします」
 バラのお茶は、ほんのり甘く、さわやかな味がしました。