ディスタンス
わたしは知っている。
この男が叫んで泣いていたことを・・・。
ほかにも、たくさん知っている。
仕事に行かないでギャンブルばかりだったこと。
借金してまで年下の女にいい顔してたこと。
肝臓をやられてドクターストップがかかってること。
典型的な安っぽいロクデナシ。
おっ!今日はエプロンなんかしちゃって、
カレーと味噌汁を研究してるようね。
そうじゃなくて、こうなんだけどなぁ・・・。
ああ、じれったい。
あらら、仕事してるよ。
げっ、ひらがな入力!それも人差し指一本タッチ!初めて見た!
ある意味、感動!
しかし、パソコンはローマ字入力のがスムースでしょう。
でもパソコン使えたのね。
最近、もう一度アイツと暮らしてもいいかなと思う。
いや、暮らしたい。
少しでも一緒にいたい。
神様お願い!、一分でも一秒でも!
わたしは知っている。
この男が毎日わたしの写真の前で鐘を鳴らし、
肩を震わせながら、わたしに語りかけていることを・・・。