オレンジ色-第五章-
夕方ジェネレーション
歩道橋の上はとうに夜空が広がっていた。部員の皆はそれぞれ東西南北、歩道橋をフルに使って星を探している。悠一も山の方に向かう車線側の端に場所を取り、見上げて星を探した。ふと、気づくと隣には俊介が星を探していた。目線を飛ばすと、結構遠くの方角を見ていた。
「今日はなんだか見つかりそうな気がするな。」俊介はひとり言のようだったが、明らかい聞こえる声量だったので、悠一に向けて言っていることが予測できた。
「何でですか?」と、悠一は俊介と同じ方向を見て尋ねる。二人は同じ方向を見たまま会話を続ける。
「今日の夕焼けは綺麗だったからね。それに、悠一君もいるし。」
「僕、幸運の女神ですか。」
「はははっ。冗談が言えるようになったね。いい感じだよ。」何がいい感じだかはわからなかったが、今の会話はとても楽しかったし、いい感じだったのかもしれない。今までなら、「はぁ。」とかで会話が終わるだろうしと、悠一は回想した。ここにいれてよかった。切にそう思う。
「ねぇ、あれっ!」莉奈の甲高い声が告げる、星の発見。莉奈のいる方向に振り返る。莉奈は星の場所を天に指差し教えていた。その指先に目線を合わせると、弱々しいが優しく光を放つ星を確認できた。悠一は嬉しくなって声を上げようとしたが、周りは冷静で、まだ星を探していた。これが一番星だとは限らないからだ。それを察し、悠一も見上げ、他の星を探す。
一通り探し終わった部員が歩道橋の真ん中、道路の中央線付近に集まる。
「他には?」と、俊介が確認する。しんとなって、一人一人が報告する。
「いや、見つかってない。」
「こっちも見当たらなかった。」
すべての人が報告をし終わったが、他の星は見つからなかった。星は、一つだけ。
「じゃあこれが一番星だねっ!」と、莉奈が確認のように言った瞬間、わあーっと歓声が広がった。悠一も喜びのあまり、手を上げ、ジャンプして喜んでいた。皆皆ハイタッチをしたり、声を上げて喜びを表現していた。俊介だけはそれを見ながら微笑んでいた。
「あ、そうだ願いごと!」その一言が空気を変えて、莉奈は両手を胸の前で組み、少し顔を下げ、目を閉じて願い事を始めた。それに倣い、俊介や部員たちも同じくして願い事を始める。悠一も同様に願い始めた。
「普通願いながら探すんじゃ…。」
「バカっ!いいから願っとけよ!」
今になってはどうでもいい会話も交わされたが、気にはしなかった。悠一は願いを続けた。
「悠一君!」その声に反応して、願い終わった悠一は手をほどき、目を開け、目線を戻した。目の前ににこにこした莉奈の姿がある。
「莉奈ちゃんは何を願ったの?」と、悠一は聞いた。莉奈は少し考える表情をして、
「それは秘密だよ!乙女の秘密♪」と返された。その言い方に少しドキドキした。
「悠一君は何を願ったの?」
その言葉に、悠一は少し考えて、莉奈に向けて答えを出した。
「僕の願いは…もう叶ったから。」
終わり
作品名:オレンジ色-第五章- 作家名:こめっち