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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
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ZsW2of2 たとえそいつがいい人でも

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ゼロが市場を歩いていると、彼の周りはいつも人が引いていた。まあ仕方ないかもしれない。彼は銀河一の殺し屋とされる男で、他の有名な殺し屋と違いその全ての依頼をたった一人で成し遂げた、文字通りの人の顔した化け物なのだから。
 だが、一人だけ避けない男がいた。その顔は見覚えがある。
 「いいのかフレンド、こんなところで油を売っていて」
 その男に唯一笑顔を覚えさせる人物。
 「まあ、商売は順風満帆だから」
 その少年はフレンドという名の旅遊商人だった。
 「…君がつらそうな顔していたからね」
 「ああ、…さっき一仕事終えてきた。最悪だ」
 「どんな人がターゲットだったの」
 「こんくらいの子供とその母親」
 「…通りで」
 
 ゼロの話を喫茶店で聞きながらフレンドは泣き出しそうになった。
 殺し屋というのは基本依頼があれば、誰であっても殺す。そして、はっきり言って断るのは許されない。なぜなら断れば違う殺し屋に自分を殺すように頼まれるおそれがあるからだ。だから、何であっても殺さなくてはならない。かわいいハムスターだろうが、前途有望な青年だろうが、とにかくなんであっても。
 だからということで殺しの依頼を引き受けたのだ、ということは裏の事情に精通しているフレンドは理解できる。自分も客を選ばずにものを売っている。たとえば魔術師が秘薬を作るのに使う草なのに、買っている奴が明らかに魔術師でない場合がある。科学者とか波動術者とか、単なるニートとか、文字通りの廃人とか。そして、そういう草の、一般的呼称は、「マリファナ」だったりするのだ。それでも彼は客を選べない。商人もまた命の危険とかそういうものがあるのだ。
 でも。
 それをわかってしまうとなおさら怒りをぶつける場所が見あたらない。
 「単なる逆恨み…」
 「そうだ」
 「…僕には理解できないな…好きになった人に子供がいたから依頼しましたなんて…恋愛とかそういうもんなの?少なくとも僕の恋愛像とはかけ離れてるよ。…狂ってる」
 「クルってなきゃこんな依頼に、しかもこんなに高い金出さねえよ。金がたくさんですぎてかえって気持ち悪いくらいだ。かといって捨てるわけにも行かないからな…おまえが物売って飯食っているように、俺は人を殺して飯を食うしかないからな」
 「…僕には、ぜんぜん理解できない。…いや、理解はしたけど納得できない」
 そうなんだろうな、とゼロはフレンドのことを分析した。
 フレンドは誰とでも友人になりたがる。相手が悪い奴でないと見抜けばどのような奴とも付き合うのだ。そんな男だからこそ、誰もが畏怖を覚える前のゼロ、そのときもすでに人斬りナイフのような奴だったのに、彼はすんなり心を開いた。だからフレンドは唯一の友人だ。そして彼は恋愛もしているが、これまた裏に染まった男とは思えないほど綺麗すぎる純粋な恋だった。それを知っているからこそ、本来なら言うべきではなかったのだろうが、他にはけ口は見あたらないのだった。
 「小さい子供なんてとばっちりじゃん」
 「そもそも親を殺してしまえばどっち道殺すようなものだが、気分は優れないな。…いくらでも見かけの綺麗な女はいるっていうんだよ…風俗でもソープでも何でも…フレンドみたいな恋愛してもねえくせに恋を理解できたような口をしているんじゃねえって…言いたかった」
 でも、言えなかった。宿命故に。