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タオル

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夫からの携帯電話が切れると、加寿子は溜息をつきながら鞄にしまった。
信号が青に変ったので横断歩道に歩みを進める。
医者の診断によると風邪が胃に来ただけだったらしい。
大事に至らなくて良かった。
昨夜、夫が突然布団から起き出して、手洗いに間に合わず廊下で嘔吐した時は何事かと思ったけれど。
加寿子は駅前の大型スーパーの自動ドアをくぐった。
日用雑貨は5階。通い慣れた店なので売り場のお知らせを見なくてもわかる。
今朝、台所で手ぬぐいの代りに使うタオルを探したら昨夜の後始末で全部使ってしまったことに気付いた。
エスカレーターで5階に着く。買い物かごを手に取りながら
「タオルは…」
慣れているはずの店内で目が泳ぐ。
ふと歯磨きの棚に目がとまる。
「そうだ」
いつも使っている歯磨き粉を一つかごの中へ入れる。
その位置から見回してみてもいつもと同じ商品の配置だ。
洗剤は二つ向こうの棚、石けんは真後ろの棚のはず。
だがタオルの売り場だけがピンと来ない。

私も歳か。

夫は定年退職して今年で3年め。
結婚生活が人生の半分以上を占めている。
2人の子供もそれぞれ独立し、今は夫婦2人の生活である。
それだけに昨夜は見たくないものを見せられた気がした。
多少風邪気味になることはあっても、あの様な騒ぎは起こしたことのない夫である。
作品名:タオル 作家名:ひろあき